Web2.0型ビジネス研究 オープンなSNS編Web2.0型金融ビジネスは成り立つか(1/2 ページ)

Web2.0の世界におけるビジネスの特徴について考えるにあたり、前回に続いてもう1つ、特徴的なソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を紹介する。ユーザーのプロファイリングを一層明確にし、より効果の高い広告モデルの展開を狙う、「オープンなSNS」だ。

» 2006年07月13日 08時00分 公開
[アイティセレクト編集部,アイティセレクト]

本記事の関連コンテンツは、オンライン・ムック「Web2.0型金融ビジネスは成り立つか――革新か、禁じ手か 『ネット金融2.0』の実態に迫る!」でご覧になれます。


 ポータル大手のエキサイトは4月26日、「オープンなSNS」を始めた。前回(Web2.0型金融ビジネスは成り立つか:Web2.0型ビジネス研究 ショッピングSNS編)紹介した「ビルコレ」と同様、だれでも参加することができるものだ。

 とはいえ、むやみやたらにメンバーになられても、それがWeb2.0型サービスを展開する土台を築くのに直結することにはならない。ましてや、そもそもエキサイトにとって効果的な意味を成さないと考えられる。

 なぜなら、エキサイトは実は、明確にターゲティングされた顧客に向けて情報発信することにより、非常に高い広告効果を導き出すビジネスモデルを築いているからだ。それは一言で例えると、ネット上で「表参道のような都市開発を行っている」(メディア本部副本部長兼メディアポータル事業部長の竹本朝直氏)、いわゆるF1、M1層をターゲットにしたターゲティングメディアということである。従って、コンテンツはおいしい飲食店の紹介やファッション関連が中心だ。キーワードの「表参道」からも推察できるように、他人から「かっこいい」「おしゃれ」と言われるようなサイトづくりを進め、そしてそこに集まる人を顧客として想定しているのである。

Web2.0型サービスで築くコミュニティ

 そんなエキサイトが手掛けることになった「オープンなSNS」の仕組みをつくる基盤となっているのは、「エキサイトネームカード」という新サービスである。ネット上の名刺だ。自己紹介情報をあれこれ掲載し、「エキサイト」からネット上に公開するのである。まだβ版であるが、それを見た人との間で「エキサイトネームカード」を交換し合い(「エキサイトネームカード」内の「友達リスト」に登録される)、「友だち」の輪を築けるようになっている(下記枠内記事参照)。

 では、「エキサイトネームカード」を取り入れて何をしようとしているのだろうか。

 エキサイトは04年2月、「エキサイトブログ」を始めた。現在、開設者は50万人にのぼる。この人たちを単純に「『エキサイト』に住む人」と考えれば、ブログというサービスは「分譲住宅と思ってもらえばいい」(竹本氏)ことになる。その分譲地は表参道にあるということだ。こうして、わざわざ出かけたくなるような街をネット上に築こうとしている。竹本氏の言葉を借りれば、「エキサイトのビジョンは都市開発の発想でつくられている」のである。

 ただ、そこは良質な街にしたい。アフィリエイト目的の場になったりアダルトなどのビジネスをされては困る。そこで、住民に限らず、街を訪れる人たちに名刺を持ってもらい、街の中で知り合った人と名刺交換してもらうことにより、出身地や趣味などの共通項で結ばれるコミュニティを自然発生させることにした。つまり、「エキサイト」ユーザーになるべく匿名性を持たせず、お互いを確認できるようにしたのである。そのためのツールとして、「エキサイトネームカード」を導入した。

 こうして街づくりが進むと、住民や街を訪れる人は、その街の中にさまざまなサービスを求めるようになる。それは、決済サービスかもしれない。金融機関そのものも必要になるだろう。そのとき、エキサイトは街の中に新たなサービスを展開することになる。これが、「エキサイトネームカード」、つまりWeb2.0型サービスでコミュニティを築こうとする狙いだ。

 とはいえ、この考え方からすると、「エキサイト」ユーザーは「選別されている」ことになる。つまり、ロングテールではない。この点について竹本氏に質問を投げかけると、次のような答えが返ってきた。

 「F1、M1層の中のロングテールを狙っている」

 要するに、「エキサイト」ユーザーの母体は、F1、M1層に限定されているという発想である。その中でも、あるいは表参道にやってくる人の中でも、「個性」あふれる人は数多い。言葉は悪いが、そういう少数派もすべて刈り取ってしまえる仕組みとして、「エキサイトネームカード」が有効に働くということのようだ。そういう人たちが自己紹介してくれれば、その個性的な関心事に対し、ピンポイントで広告を打つことができるのである。このターゲティング広告こそが、エキサイトの狙いである。従って、エキサイトにしてみれば、そういう人が「ロングテールかどうかは議論ではない」(竹本氏)のである。

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