Web 2.0「企業版」はこうなる?商品企画の最前線

自動車の製造などにおいて、世界に分散した組織をWebで統合して共同作業をする「バーチャル大部屋」というコンセプトは企業版のWeb 2.0という言い方ができるかもしれない。

» 2006年07月14日 10時03分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 トヨタ自動車が、多目的レジャー(RV)車の欠陥を8年間にわたって放置したとされる業務上過失傷害事件に関して、国土交通省は事実関係を文書で報告するよう指示した。同自動車のかじ取り装置が、強度不足によって破損してしまうという欠陥だ。

 一般に、こうした問題が起きる原因は、製品開発段階において、採用する部品の強度を正確に確認していなかったことなどにあると考えられている。そこで、コンピュータを利用してシミュレーションを行い、部品の強度や材質の適正、大きさの確認を行うのが3次元CADをはじめとしたPLM(製品ライフサイクル管理)製品である。

 UGS PLMソリューションズ、プロダクト&インダストリマーケティング部で部長を務める島田太郎氏は、「作らないと(強度などが)分からないものをバーチャルな環境でシミュレーションすることによるコストダウンの効果は大きい」と話す。

UGS PLMソリューションズの島田氏

 UGS PLMソリューションズの製品が、日産自動車における製品開発に利用されていることから、島田氏は製品設計における要件定義、概念および詳細設計、工程設計、製造、保守サービスというそれぞれ場所が異なるプロセスも透明化し、ネットワークを強化することがPLMの本質だと指摘する。

 だが、島田氏によれば「実際には、製造業のプロセスは“すり合わせ”重視であり、整然と効率化できない」という。たとえるなら、さまざまな工程の担当者が1つの場所で作業し、要件について細かいやり取りをザワザワと行う「大部屋主義」だという。

 しかしながら、特に自動車の製造などは各工程が世界各地に散在していることが多く、大部屋をつくるのは難しい。エンジニアリング、マーケティング、製造、物流、サービスなどを担当する各パートナー企業とも業務を遂行することを考えると、物理的に一緒に仕事をするのは不可能である。

 そこで提案されているのが「バーチャル大部屋」ともいうべきPLMのコンセプトである。3次元設計、製品開発、生産、ナレッジの共有といったプロセスを担う多数の担当者が、あたかも1つの大部屋にいるようなイメージのWeb上のバーチャルな作業場で共同作業する。

複数の業務をまたがるバーチャルな作業場

 これまでこうしたコンセプトは「コラボレーション」などと呼ばれていた。だが、「Webを利用した新たな可能性の追求」という意味では、世界に分散した組織をWebで統合して共同作業をするバーチャル大部屋は、企業版のWeb 2.0という言い方ができるかもしれない。

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