Vistaの大本命「WinFS」を開発中止に追い込んだMSの企業文化とは?(2/2 ページ)

» 2006年07月18日 07時00分 公開
[Greg DeMichillie,Directions on Microsoft]
Directions on Microsoft 日本語版
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O/Rマッピングシステム−ADO.NET
 開発が進むにつれて、当初から野心的だったWinFSの目標はさらに拡大し、他のテクノロジーと重複するようになった。2004年にWinFSプロジェクトは、汎用オブジェクトリレーショナル(O/R)マッピングシステムの開発に取り組んでいたMicrosoft内のグループObjectSpacesを吸収した。このシステムは、データベースシステム内の複数のテーブルのデータを、C#などのオブジェクト指向プログラミング言語を使って単一のオブジェクトとして表現できるようにするテクノロジーである。

 多数のベンダーがO/Rマッピングシステムを開発しているが、それぞれアプローチが異なっているうえ、購入してすぐに使えるというソリューションではなく、マップ対象となるスキーマの仕様を基に大掛かりなカスタマイズが必要である。

 WinFSがO/Rマッピングシステムを取り込んだことは、WinFSチームの作業負荷の増加だけではなく、Microsoftの戦略的データアクセスAPIであるADO.NET開発チームとの競争を引き受けることにもなった。ADO.NETチームは、リレーショナルデータとオブジェクト指向言語とのより優れた統合を実現するテクノロジーの開発に取り組んでいる。

ファイルシステム−WindowsおよびNTFS
 WinFSチームがファイルシステムテクノロジーとデータベースとの統合に着手するなかで、Microsoftのファイルシステムチームはそれを傍観していたわけではなかった。ファイルシステムチームは、最近トランザクショナルNTFSの開発に取り組んでいることを発表している。これは、次期Windowsサーバー製品(現在でもコード名でLonghornと呼ばれている)に搭載が予定されている機能で、OSが複数のファイルに対する更新を調整し、全ファイルが正常に書き込まれるか、ロールバックされるかのいずれかの状態になることを保証するシステムである。

WinFSの行方は?

 Microsoftは、WinFSの開発を中止したが、同テクノロジーを構成する技術は他のグループに吸収される見込みだ。例えばO/Rマッピングシステムは、ADO.NETの次期バージョンに組み込まれる予定である。O/RシステムをADO.NETに組み込むことで、統一されたO/Rシステムの開発が可能になり、LINQプロジェクトとの統合も実現できるだろう(LINQはC#およびVisual Basicでのデータベースクエリの作成を支援する機能)。

 また、データベース内のテーブルとファイルシステム内のファイルを同期する機能は、SQL Serverの次期バージョンに組み込まれる予定だ。同期機能をSQL Serverに実装することで、汎用OSサービスとなるはずだったものがSQL Serverの1機能として提供されることになるが、戦略的製品としてのMicrosoftのデータベース開発への傾注が強まり、収益拡大につながる可能性がある。

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