HP Integrityサーバシリーズの新ラインアップからItaniumの未来を読む元麻布春男のマシンレビュー(1/3 ページ)

x86プロセッサの高性能化により、性能面でのアドバンテージが少なくなってしまい、将来を疑問視されることもあるItaniumだが、2006年4月にHPが発売した機種を見る限り、メリットや性能以外の部分ではアドバンテージがあると見える。今回は、HPがIntegrityシリーズのラインアップから、Itaniumの現状と将来を見てみよう。

» 2006年07月19日 09時00分 公開
[元麻布春男,ITmedia]

Itaniumの共同開発元、HPがIntegrityシリーズをアップデート

 4月18日、日本ヒューレット・パッカード(以下、HP)は自社開発によるチップセットを用いたItanium 2プロセッサ搭載サーバ3機種を発表した。言うまでもなくHPは、Itaniumプロセッサの共同開発元である。2004年12月付でItaniumプロセッサ関連のデザインチームはインテルに移籍し、一元的にプロセッサの開発を行うことになったが、Itaniumのプラットフォームに向こう3年間で30億ドルの投資を行うと表明していた。自社開発チップセットによる新製品の投入は、それを裏付けるかのような動きだ。

 Itanium 2プロセッサを採用したHPのIntegrityサーバには、ブレードサーバからメインフレーム級のSuperdomeまで、多彩な製品が揃う。x86 プロセッサを搭載したProLiantサーバ、無停止技術を用いたIntegrity NonStopサーバ(プロセッサはItaniumに移行中)を含めれば、さらに製品ラインナップは多様さを増す。今回発表された新製品は、ミッドレンジのrx7640(8ソケット)、同rx8640(16ソケット)とハイエンドのSuperdome(64ソケット)の3機種。これらはすべてセルボード・アーキテクチャを採用したモデルであり、従来のsx1000チップセットに代わってsx2000チップセットが用いられる。

実用性という観点からセルボード・アーキテクチャを採用

 セルボードとは、プロセッサ、メモリコントローラ、メモリといった演算処理の中核となるコンポーネントを1枚のボードモジュールにしたもの。複数のセルボードを高速なクロスバースイッチにより連結してサーバを構築することをセルボード・アーキテクチャと呼ぶ。SuperdomeおよびIntegrityサーバが採用するセルボードには4つのソケットが用意されており、rx7640では2枚のセルボード、rx8640では4枚のセルボード、Superdomeでは16枚のセルボードを、それぞれ内蔵することができる。

 セルボード・アーキテクチャを採用する利点は、その高い実用性にある。それぞれのサーバは最小構成単位として、1枚のセルボードで構成可能で、必要に応じてセルボードを追加していくことで容易にシステムを拡張できる。セルボード間は物理的、電気的に独立しており、例えば電源もセルボードごとに個別に供給される。従って、どれか1枚のセルボードに障害が発生した場合も、ほかのセルボードへ影響が及びにくい。同時にセルボードは物理パーティショニングの単位でもあり、パーティション間の高い独立性が保たれる。

 一般的な大規模SMPサーバの場合、パーティショニングは論理的に行うため、論理パーティションの数が増えるにつれてプロセッサあたりの性能が低下していく傾向がある。これに対し物理的にパーティショニングされるセルボード・アーキテクチャでは、4CPU〜16CPUという最もよく利用されるパーティションサイズで、高い性能を発揮する。

 従来のIntegrityサーバ上位モデルでは、セルボード・アーキテクチャに対応したチップセットとしてsx1000が使われてきた(セルボード・アーキテクチャをとらないrx4640以下のサーバはzx1チップセットが使われる。こちらのアップデートも近い将来行われる見込み)。新製品に採用されるsx2000チップセットは、Superdome用のチップセットとしては、初代のYosemiteから数えて3世代目にあたる。その特徴を簡単に言えば、各種インターコネクトの帯域を改善することによる性能の向上と、より一層の冗長化の実現により、さらなる信頼性の向上を達成したもの、ということになる。

図1 一般的なサーバとセルボード・アーキテクチャのパーティション構成時の性能構成の違い
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