こうした広帯域化、性能の強化に加えて、信頼性のさらなる向上もsx2000チップセットの大きなテーマだった。すでにダブルチップスペアリングをサポートした専用メモリ、クロスバーが3重化されたことについては取り上げたが、CPUやメモリに障害が発生した場合の動的縮退、CPUやI/Oカードの動的構成変更、各種冷却ファンや電源モジュールなどの二重化など、さまざまな工夫が凝らされている。チップセット自身やバックプレーンに生じた障害、クロック信号の不良など、sx1000では対応していなかった、非常に障害発生確率の低い障害にもsx2000は対応している。
x86プロセッサの動作クロックの大幅な向上による性能の強化は、当初考えられていたItaniumの性能面でのアドバンテージを縮めてしまった。ここにきて、ようやくXeonの動作クロックの伸びも落ち着いてきたが、単純な処理性能の比較だけであれば、Itaniumの優位性はそれほど大きくない。しかし、プロセッサやチップセットといったコンポーネントレベル、セルボード・アーキテクチャに代表されるシステム構成など、さまざまなレベルでの信頼性確保という点で、Itaniumには大きなアドバンテージがある。
HPのサーバラインナップには、無停止であることを標榜するIntegrity NonStopシリーズも用意されている。旧タンデム・コンピュータから継承したNonStopコンピュータが、プロセッサとしてItaniumを選んだというのは、決して偶然ではない。信頼性の向上に大きなコストを払っているのがItaniumプラットフォームの特徴であり、単純な性能だけでx86プロセッサと比較することはできない。
こうした点が理解されつつあるせいか、ここにきてItaniumサーバに動きが出てきた。SQL ServerやOracleといったDBMSと組み合わせて、データベースバックエンドとして用いられる事例が増えている。Integrityサーバ自身は、HP-UX、Linux、Windows Server 2003、OpenVMSと多岐にわたるOSをサポートするが、SQL Serverの場合はWindows Server 2003、Oracleの場合はHP-UXが選ばれる傾向が強いという。ある意味、どちらのDBMSを利用したいかでOSが決まる側面もあるという(ただし、これはHPの推奨というより、顧客側の希望によるところらしい)。
DBMS以外の対応アプリケーションも、7000種類を超えなお増加を続けている。こうしたアプリケーションの充実は、Itaniumサーバの出荷金額の底上げにも貢献している。さらにわが国の場合、HPだけでなく、NEC、日立製作所、富士通といった国内のメインフレームメーカーが、こぞってItaniumのサポートを行ったことで、ある種の信用が生まれた。これらのハードウェアメーカーを中心に、2005年9月に結成されたItanium Solutions Alliancesも、各社合計で1兆円を超える規模の投資を行うことを表明しており、普及に一役買うことが期待されている。
Itaniumを搭載したシステムは、ハイエンドであるために、出荷数量という点ではXeonやOpteronを搭載したサーバには及ばない。その点で、将来性に疑問が持たれたり、批判されたりすることも少なくない。しかし、すべてのサーバをPCと同じアーキテクチャにして良いのか、という問いかけも当然あるはずだ。筆者は、高信頼性と高性能を両立させる必要のあるアプリケーションに、Itaniumの利用は今後むしろ広がっていくと考えている。
このコンテンツはサーバセレクト2006年7月号に掲載されたものを再編集したものです。
Copyright© 2010 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.