ちょっとかわいい、でも困ったプライドの高いM君女性システム管理者の憂鬱(3/4 ページ)

» 2006年07月20日 08時30分 公開
[高橋美樹,ITmedia]

置き去りにされたM君の態度

 いよいよ当日。本社から電車で約20分のところにそびえ立つ新拠点ビルには、2カ月後1000人のユーザーが移転してくるという。サーバ室以外の部屋は、何もなくがらんとしているそのビルから、これから作業を開始する、とM君に連絡の電話を入れた。

M君:「いいなあ、そっちは楽しそうで」

 いまだにいじけモード全開だ。

わたし:「仕事だからそんなに楽しいわけがないでしょう。手順書の確認だけで精一杯だよ」

 実際、作業が始まるとサーバ室にほとんど笑いが起こることもなく、作業担当者3人と引き継ぎの立会い者1人、総計4人のメンバー全員が、引き継ぎ書とにらめっこで「この記述は訂正が必要」「この個所は説明不足」と、実際の作業に合わせて赤を入れることに熱中していた。

 なぜそこまでするかといえば、会社間で一連の作業を引き継ぐということは、責任の所在が移行されることを意味する。引き継ぎ作業をいい加減に行うと、何か事が起こったときに、誰に本当の責任があるのか分からない。最悪の場合、補償問題にさえ発展しかねないのだ。それだけこの引き継ぎは重要な意味を持っている。そのため、引き継ぎというプロジェクトに対して、通常の保守料金とは別にA社に特別な料金が支払われているのだ。この引き継ぎ書が何百万円という価値を持っていると行っても過言ではない状況だった。

 そんな中、作業は順調に進み、ADのDBをリストアするところまできた。引き継ぎ手順書によれば、先にインストールしたバックアップソフトでリストアを行い、あとは完了まで待機するということになる。作業スケジュールでもリストアが始まったところで休憩を取る予定が組まれていた。ところが、ここで重大な問題が発生した。なんとDATのデータが読み取れないのだ。あれほど予行演習を重ねていたというのに・・・・・・。実は、リストアするデータは最新のものを用いることになっていたため、予行演習時とは違うDATが用意されていたのだ。

手順書という呪縛

 すぐにA社の作業立会い者が本社に連絡を取る。しばらくは原因が分からず、携帯電話によるボソボソとした会話が続いていた。その間、引き継ぎが完了していない作業には、何の責任も感じていないわれわれ運用チーム3人は、柔軟体操を始め、誰の体が一番固いかを競い合っていた。

 30分ほど過ぎたころだろうか、柔軟体操にもすっかり飽きたわたしたち作業員が寝床作りのため、ダンボールを探していたところ、A社担当者が頭をかきながら近づいてきた。

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