ちょっとかわいい、でも困ったプライドの高いM君女性システム管理者の憂鬱(2/4 ページ)

» 2006年07月20日 08時30分 公開
[高橋美樹,ITmedia]

ビッグイベント

 そのころ、1年に1度あるかないかのビッグイベント、ADサーバ増設の予定が入ってきた。それまで、A社単独で対応していた案件だが、引き継ぎ期間ということで、今回はA社担当者1名とわたしたち運用チームのAD担当3人が現地に出向き、3日間掛けてADサーバをドメインに追加する作業を行うことになった。

 引き継ぎ作業は、A社が作成する手順書に沿って、われわれAD担当が作業を行う。1つの作業が完了するごとに、A社担当者が引き継ぎ完了のサインをするという流れになった。このA社の現地立会いには、スキルや経験が十分な技術者と上司からのオーダーでM君の先輩が担当することに決まった。自分一人で担当するものと思っていたM君には、これが相当ショックだったらしく、しばらくは口をきかない状態が続いたのだった。

 そんなM君にも、多少のかわいげが垣間見えることもあった。わたしが何気なく「M君、AD担当として他社に指導するくらいだから、MCSEくらい持ってるんでしょう? 」と尋ねたところ、「資格なんて現場では何の役にも立たないですよ。」とやけになって答えてきた。

わたし:「確かにそうかもしれないけど、それは資格を持っている人が言って、初めて説得力を持つ言葉だよね。持ってない人が言うと、ただの負け犬の遠吠えだね」

 本当に、何の悪気もなく軽い気持ちで言ったことが、M君の闘争心に火をつけたらしい。翌日からM君は、MCPの赤本を片時も離さず持ち歩くようになった。そんな姿に態度はふてぶてしいが、実は素直、といった評判が立ち始めた。さらには、本当は寂しがりやらしいといったうわさまで流れ始めた。そんな中、M君はADサーバ増設の作業には立ち合わず、本社に残り、司令塔としてA社設計担当とわれわれ現場作業担当の連携を取る係に任命された。

 ますますいじけるM君を尻目に、わたしたち作業担当者3名とA社引き継ぎ担当者は、手順書に沿ってデモ機を使った予行演習を何度も行い、手順書の不明箇所の訂正要求など、A社と慎重に準備を重ねて、当日に備えたのだった。

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