「狙うは国内シェア30%超」──ついにSUSE Linux Enterprise 10が登場(1/2 ページ)

ノベルが発表した「SUSE Linux Enterprise 10」は、いち早くXenを搭載するなど、魅力的なディストリビューションに仕上がっている。加えて、日本独自のプロモーションなども行うことで、シェアを上げることはできるだろうか。

» 2006年07月20日 08時00分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 Novellが米国時間の7月17日に発表したエンタープライズ向けLinuxディストリビューションの最新版「SUSE Linux Enterprise 10」について、ノベルは7月19日、プレス向けの発表会を開催した。

 ノベルの代表取締役社長、堀昭一氏は冒頭、SUSE Linux Enterpriseは、オープンソースとオープンスタンダードの商業ソフトウェアのミックスソースによるOpen Enterpriseの実現に当たって、その基盤となるものであると説明した。

 そして、その追い風も吹いているという。米国でのサンプル調査でも、ミックスソースを導入する企業の割合とWindowsだけを使用する企業のそれはそれぞれ58%、42%であり、意識が根付きつつあり、日本においても、個人情報保護法や日本版SOX法など新しい法規制が、情報インフラの見直しを促進し、これに追従するのではないかと述べた。

堀氏 堀氏

目玉はXen

 2004年5月の「Novell SUSE Linux Enterprise Server 8/Novell SUSE LINUX Desktop 1」、次いで2004年11月に「Novell SUSE LINUX Enterprise Server 9/Novell Linux Desktop 9」がリリースされて今に至る同社のエンタープライズ向けLinuxディストリビューションだが、リリースのたびにその名称を微妙に変えているのは今回も変わらない。

 今回の発表では、「SUSE Linux Enterprise Server 10」(SLES10)「SUSE Linux Enterprise Desktop 10」(SLED10)の2製品と「Novell Customer Center」と呼ばれる登録/更新/現状把握などをWebポータル上で実施可能にするサービスを総称して「SUSE Linux Enterprise 10」というブランド名で呼んでいる。ディストリビューションの主なコンポーネントは、Linuxカーネル2.6.16、glibc 2.4、GCC 4.1.0などで、SLES10については、パフォーマンスは前バージョンと比べて15%程度向上したほか、1024CPU、10Tバイト超のメモリもサポートしたことで、より大規模なシステムへの対応も可能となった。

 今回発表されたSLES10。セキュリティ機構にAppArmorを採用していることなども特徴として挙げられるが、一番の目玉は何と言ってもオープンソースの仮想化ソフトウェア「Xen」の搭載だろう。Xen 3.0.2が搭載され、仮想マシンの実行、停止、再設定をYaSTモジュールによって管理可能となっている。年内に完全仮想化(フル・バーチャライゼーション)の下で動作するものを提供するほか、SP1でSLES9の準仮想化(パラ・バーチャライゼーション)をサポートするという。

 とは言え、現実的な利用を考えるに当たって、Xenはワークロードの管理機能などでまだ十分とは言えない部分がある。この点について、ノベルでテクノロジースペシャリストグループのマネジャーを務める岡本剛和氏は、「ロードマップとして、データセンター全体をマネジメントする仕組みを提供する予定はある」と答えるにとどまった。

YaSTモジュールで仮想マシンを管理

 ストレージ関連の機能では、Linuxカーネル2.6.16で取り込まれたOracle Cluster File System 2(OCFS2)のほか、Enterprise Volume Management System(EVMS)、iSCSIのターゲットとイニシエータ両方になれる機能などを備えたことで、ストレージの仮想化も統合的に行えるという。

 一方、SLED10については、Xenが搭載されていないなど、ポイントとなるものが少ないようにも見える。SUSE Linux 10.1などと大きく異なっている点を挙げるなら、改良されたユーザーインタフェースが採用されている点だろう。これは同社が2月に公開したグラフィックスサブシステム「Xgl」(X over OpenGL)やコンポジット目ウィンドウマネージャ「Compiz」で実現されるデスクトップ効果を指しているのではなく、下図のように、メニューなどのレイアウトなどのインタフェースが大きく変更され、操作性を向上させようとしているのである。

SLED10のデスクトップ画面。ちなみにデフォルトはGNOME

 このほか、シンクライアントとしての利用を想定した機能や、ディスクのロックダウンなども可能にするなど、エンタープライズユースを想定する一方、Windowsがすでに使われていると想定し、自然な形で共存できるよう認証やメッセージングシステムで問題の起こりにくいディストリビューション作りがなされている。

 価格はいずれもオープン。市場推定価格として、SLES10が4万1880円から(zSeries以外の1サーバのライセンス。サーバ当たりのCPUは32個まで)。SLED10が1デバイス当たり6000円。また、サポートについては、米国での発表ではベーシック、スタンダード、プライオリティの3段階で提供するとされていたが、日本国内ではベーシックが提供されないようだ。

13:05追記:ベーシックはサポートが付属しないものと考えればよい。つまり、上記の4万1880円がベーシックに相当することになる。

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