Ottawa Linux Symposium2日目:ユーザー空間は最悪、ほかLinuxの最新動向リポート(1/3 ページ)

初日に比べ、テクニカルなトピックが増えたOLSの2日目では、「ファイルシステム断片化の影響」「デジタルデバイド解消にLinuxを役立てる」など興味深いトピックもあったが、「ユーザー空間が最悪な理由」はとりわけ興味深い。

» 2006年07月27日 10時30分 公開
[David-'cdlu'-Graham,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine

 オタワ発――第8回オタワLinuxシンポジウム(OLS)の2日目は、初日と比べるとテクニカルなトピックが増えた。講演で特に印象に残ったのは、「ファイルシステム断片化の影響」「デジタルデバイド解消にLinuxを役立てる」「ラップトップで使うLinux」だが、なんと言ってもデイブ・ジョーンズ氏の講演「ユーザー空間が最悪な理由」がこの日のハイライトだった。

 印象に残った講演として最初に挙げた「ファイルシステム断片化の影響」を講演したアード・ビースフーベル氏は、Philips ResearchのStorage Systems & Applicationsグループに所属し、HDDレコーダーを研究テーマとする科学者である。同氏の説明によると、HDDレコーダーはテレビ放送の信号を機器に記録することで動作し、使用可能なものを表すためにメタデータを用いる。何を記録し、何を記録しないかをある程度まで自律的に決定できる。その基盤となるのが、視聴者が観たいものをプロファイルにまとめる機能や、友人のHDDレコーダーが記録しているものを記録する機能である。HDDレコーダーの録画時間は長く、多くの場合に一度に複数のテレビ番組を録画できる。

 HDDレコーダーをデモ用のプラットフォームとして使いながら、ビースフーベル氏は講演をファイルシステムの断片化へと進めた。断片化は一般にパーセンテージで表現されるのが定番だが、パーセンテージではピンと来ないと同氏は言う。ファイルシステムの断片化の影響を明瞭に示すため、新しい測定方法を作る必要がある。便利な測定方法が、相対速度である。

 ビースフーベル氏は、ハードディスクのプラッターの図をスライドで拡大して見せた。トラック(プラッターを周回するデータのリング)上のデータ記録形態を示し、隣接するトラック間のオフセットは、現在のトラックを離れて次のトラックにディスクヘッドが移動して正しい地点から動作を続行するのにちょうどよい大きさになっていることを説明した。

 ギャップは(彼の説明によると)ファイルのセグメント間に存在し、そのファイルには属さない空間である。断片は、同じファイルに属するが、連続していない部分である。一般にハードディスクでは、ギャップが小さい場合はトラックにあるデータをギャップごと一気に読み取るが、ギャップが比較的大きい場合はドライブヘッドが次の断片のトラックをシーク(移動)してから読み取りを行う。読み取り対象ファイルに属するデータトラックが、1回のシークとドライブの1回転で読み取れるなら理想的である。

 背景に触れながら、彼はこのテストに使ったツールを順に説明した。最初のツールpvrsimは、HDDレコーダーの動作をシミュレートする。500MB〜5GBのサイズのファイルを一度に2つずつディスクに書き込み、HDDレコーダーのライフサイクルをエンドレスにエミュレートする。新しいファイルを保存する領域が必要になると、優先度を決定するシステムによって録画が消去される。

 2番目のツールは、hddfragchk。現時点ではダウンロードできないが、いずれ公開される予定ということである。このhddfragchkユーティリティは、ハードディスク内のトラックをビジュアル化し、データをファイル別に色違いで表示する。 ビースフーベル氏は、実行中のhddfragchkの表示を示すデモ用のアニメーションGIFを使って、pvrsimの実行中にファイルシステムが断片化していく様子を示した。

 最初のファイルシステムはXFSで、ディスクのあちこちにファイルが移動されるにつれて小さな断片化がはっきりした色の線となって現れるのが、早回しのアニメーションで見ることができた。もう1つのファイルシステムはNTFSで、明確なプランニングがなくてもファイルシステムが領域を見つけてブロックを割り当てられる間は、信号を受信していないテレビの画面を観るかのように表示は動きに乏しかった。

 次にビースフーベル氏が見せたのは、ファイルシステムの種類と書き込み速度の変化を示すグラフだった。すべてのファイルシステムが、時間の経過とともに速度の低下を示していた。低下の程度はファイルシステムの種類によって差があったが、ここではその詳細に関する説明は冗長なので省く。

 相対速度はファイルシステムによって大きく異なる、とビースフーベル氏は結論した。1本のデータストリームをそれ専用のエクステントに常に配置すると同時に、複数のデータストリームをそれぞれ専用のエクステントに個別に配置するという設計原則に、ファイルシステムは忠実でなければならない。

 エクステントが何を指すのか、講演でははっきり説明がなかったが、前後から判断すると、ファイルシステムからファイルにあらかじめ割り当てられるセクションを指すようだ。彼は、最適なハードディスク断片化パフォーマンスを数式で表し、作成される断片と同じ数の断片が削除されるなら均衡が保たれる、と述べた。

 また、断片化の防止にはスイートスポットがあって、それは5%の空き領域を最小限保証することだ、とも彼は指摘した。5%の空き領域があると、断片化が減少する。相対速度は、ファイルシステムの断片化を測定する便利な単位だと、彼は結論した。最悪のファイルシステムでは、最適速度の60%まで速度は低下する。

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