社内の協調関係がID管理の成否を握るヒット商品分析●アイデンティティ管理ソリューション(2)(1/2 ページ)

日本版SOX法への関心の高まりとともに、ID管理ソリューションに対するユーザーの関心度が急激に高まっている。前回の続編としてこの市場を俯瞰するとともに各ベンダーの動きを探る。

» 2006年07月31日 14時56分 公開
[越後耕一,アイティセレクト編集部]

これまで蓄積してきた経験やノウハウを武器に市場をリードする

 「我々がID管理という市場に参入したのは2002年のことで、日本では一番早かったと思う」と語るのは日本アイ・ビー・エムのソフトウェア事業Tivoli事業部ACPソリューション・スペシャリスト、高橋徹氏だ。「従来、セキュリティというのはネットワークが中心だった。今後はもっとビジネス寄りになってきて、セキュリティに投資すればビジネスとしてきっとリターンがあるという世界が来ると考え、それを他社に先駆けて日本市場に訴えた。それがちょうど今、日本版SOX法と情報漏洩問題への対策ということで注目されてきたのです」

 ID管理は、従来縦割りになっていたアプリケーションを横差しにして管理しようという考え方であり、それには繋げる先のさまざまなシステムのサポートが必要だ。また、ID管理はインフラなので、5年くらいかけてシステムを統合し、その後は安定して稼働させ続けなければならない。従って、「きちんとした体制が必要だし、それなりの体力が要る世界だと思う」と高橋氏。まさに同社の強みはそこにあるのだ。

 現に、数千ユーザーから数万ユーザーというクラスの大手企業をはじめ、最近はミドルクラスの企業への導入も着実に増えているという。

 従来、アクセス権の提供、パスワード変更、アカウント更新などユーザー情報のライフサイクル全般にわたる管理は管理者が行っていた。しかし、同社では1人の管理者が管理できるのは200人が限界だとしている。日本版SOX法に手っ取り早く対応するためには、人手で勝手に改竄などができないようにするのがベストだ。となると、ID管理ツールを導入するしか手がない。だが、それもそう簡単ではないのだ。

 ID管理は、人が入社し、さまざまな部門を異動し、そして退職するまでの人事の流れをシステム化し、可視化することだが、IT部門や人事、総務など、種々の部門が少しずつ関わるので、各部門にとっては、かえって余計な仕事が増えるケースもあるし、また情報提供に応じるかどうかでもめたりすることもある。だから、その間を調整するのがベンダーの仕事になるケースもある。

 同社には今、確かにフォローの風が吹いている。だが高橋氏は、「1件1件きちんとやっていくことが我々の戦略であり、そうして実績を積み重ねていく以外に、ここで成功する方法はない」と断言する。

導入し易い、役に立つ独自の製品を揃え、ビジネスチャンスの拡大に挑む

 ID管理は、本人認証や認可などサービスを受ける側の利便性を向上させるものから、企業内のID情報を可視化し統一的に管理するもの、そして複数の企業間で連携してID情報を管理するものへと進化している。

 「今、日本は第2ステップにあり、米国は第3ステップにあるという感じです」と語るのはサン・マイクロシステムズのクライアント・ソリューション統括本部CSテクノロジー・オフィス プリンシパル・テクノロジスト、下道高志氏だ。

 また、Sun Javaソフトウェア・ソリューション本部ソフトウェア・ビジネス推進部ストラテジスト、田中克哉氏によると、「日本の企業では、まずLDAPディレクトリを導入し、次いで認証を強化するためのシングルサインオン、そしてID情報の一元的なライフサイクル管理を実現するプロビジョニングへとステップを踏んで導入するケースが多い」そうだ。もちろん、中にはまだLDAPディレクトリを導入していない企業もある。だからこそ、ビジネスチャンスもあるわけだ。

 同社は今、プロビジョニング製品「Sun Java System Identity Manager」 に力を入れているが、その最大の特徴は仮想的にさまざまなシステムをマネジメントするバーチャル・アイデンティティという考え方とエージェントレス・アダプタを採用している点にある。

 と同時に、コンプライアンスを支援するために作られた姉妹製品「Identity Auditor」をも、「本当にそのまま使える、非常に役に立つ製品です」と推奨する。

 ただし、「普通のプロジェクトとは少し進め方が違ってくる」と田中氏は言う。「ルールを定義しないといけないので、IT系の人だけではなく、人事や総務、SOX法担当者などを集めてチームを作る必要がある。会計の知識や各種の法制度について、少なくとも理解する能力がないと難しい」

 一方、田中氏は「ID管理をきちんとするとコストも下がり、社会的信用度も増すので、日本の企業もID管理でプロフィットを上げるんだというプラス志向の視点を早く持って欲しい」と語る。それだけ、期待が大きいということだ。

       1|2 次のページへ

Copyright© 2010 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ