「買い方」だけではない消費行動の革新生活経済におけるデジタル化の諸相1[購買プロセスと情報] 第1回(2/2 ページ)

» 2006年08月01日 08時00分 公開
[成川泰教(NEC総研),アイティセレクト]
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 こうした事態がなにゆえに生じてきたのかといえば、ひとえにサービスを提供する事業者たちの継続的努力の成果ということになるわけだが、視点を生活者に転じて考えてみると、そうした購買スタイルが生活者の側に確立したということが、非常に重要な点だと考えられる。

 もう少し現状をつぶさに見てみよう。総務省統計局が02年から集計している「家計消費状況調査」では、全国の世帯における家計支出の動向とともに、インターネットなどIT関連の機器やサービスの利用動向を定点的に調査している(下グラフ2参照)。

グラフ2◎インターネットを通じて注文した人がいる世帯比率の推移(総務省「家計消費状況調査年報」を基に作成)

 それによると、05年においてインターネットにより商品やサービスの注文を行った人がいる世帯は全世帯の1割を超えた。一見すると、大した事ではないと思われるかもしれないが、世帯主の年齢別に見た場合、最も利用が盛んな世帯主が30歳代の世帯で利用率は2割を超えている。世帯主が40歳代の世帯の利用率も2割に迫る勢いである。これらの数字は年を追うごとに上昇を続けており、今後も拡大することが見込まれている。日本においても30歳代、40歳代を中心に、インターネットを活用した消費スタイルがそれなりの割合で確立していることがうかがえる。

 最近の流通業界では、コンビニエンスストアの苦戦と百貨店の復活、総合スーパーの大規模化などが取りざたされているが、個人消費全体の動向や店舗を通じた小売販売額が総じて一進一退の状況にあるなか、ECの取扱高が増え続ける状況はまだしばらく続きそうである。米国でも同様のトレンドが観測されている。

 EC出現時にあった、「超流通」で店舗がなくなるとか「クリック・アンド・モルタル」といった見方は、決して無意味な議論ではなかった。だが、生活者の消費スタイルという意味では、いま振り返ってみれば、いささか事業者の側に偏った視点だったように思う。インターネットによる消費行動の革新は、もはやそれがリアルの店舗とどうすみ分けるかとか、どういった商材で有効かという問題はおろか、購買プロセスそのものの議論を超えたところに広がっているのが実際である(「月刊アイティセレクト」掲載中の好評連載「新世紀情報社会の春秋 第四回」より。ウェブ用に再編集した)。

成川泰教(なりかわ・やすのり)

株式会社NEC総研 調査グループチーフアナリスト

1964年和歌山県生まれ。88年NEC入社。経営企画部門を中心にさまざまな業務に従事し、2004年より現職。デバイスからソフトウェア、サービスに至る幅広いIT市場動向の分析を手がけている。趣味は音楽、インターネット、散歩。


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