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» 2006年08月03日 08時00分 公開

生活経済におけるデジタル化の諸相1[購買プロセスと情報] 第2回:EC拡大の裏で起こる構造変革

新世紀情報社会における生活者の経済活動について考えてみると、その一つの特徴としてECの拡大が挙げられる。ところが、ECはもはや単なる商品の購入画面というだけではない存在意義を持っているという。それは……。

[成川泰教(NEC総研),アイティセレクト]

消費行動における情報の体系化へ

 生活者の購買行動を表す用語「AIDMA(アイドマ、※1)」に代わって、インターネットの現代では「AISCEAS(アイシーズ)」という言葉が盛んに使われている。最初の2つのプロセス、「attention」(注意)と「interest」(興味や関心)は「AIDMA」と同じだが、それに続くのは「search」(検索)、「comparison」(比較)、「examination」(検討)、「action」(購買)、「share」(情報共有)となる(下図参照)。インターネットが出現する前から購買とはそういうプロセスだといわれればその通りだが、「AISCEAS」は、各プロセスがインターネットサービスと深く結び付いていることを示唆する目的で使われている。

購買プロセスにおけるAISCEASの概念図

 グーグルのサービスを例にとると、アドワーズ広告などは、キーワード検索の結果に対して関連する商品や事業者の広告を表示することで、検索を行った人が最も強い関心を抱いている瞬間を狙って、そこに注意や興味を持たせる手法である。既に実現したサービスについてそれをうんぬんすることはたやすいが、これを発案し洗練されたサービスとして市場に投入したことは、マーケティングの歴史上における大きな一歩となっているのは間違いない。

 また、日本では実施されていない「Froogle」という同社の商品検索サービスは、検索結果としてさまざまなECサイトにおける商品画面を表示することで、比較や検討から購買までが一貫して行える仕組みになっている。このサービスによるグーグル側のメリットは、紹介手数料やさらなる広告収入の拡大だと思われる。同様の機能を持つサイトである日本のカカクコムのように、購入者によるレビューなどの情報の共有までサポートされている例も目立つようになっている。

 このように、検索サービスを核にした新たな広告手法が発達するとともに、CGMと呼ばれる生活者自身による商品レビューやリコメンドが、いわゆるアフィリエイトプログラムとして購買行動に連動するようになった。そんなスタイルが、最近のECでは主流になりつつある。

 ECはもはや単なる商品の購入画面ではなく、そのプロセス全体を通じた情報行動を体系化する方向に動いている。経済活動における情報のデジタル化の1つの諸相である、商品やサービスに関する周辺情報のデジタル化(生活経済におけるデジタル化の諸相1[購買プロセスと情報] 第1回:「買い方」だけではない消費行動の革新参照)の進展は、広告イメージといった従来のメディアが手掛けてきた手法とは全く異なるインターネット独自の購買行動を生活者に浸透させつつある。既に多くの生活者がこうしたスタイルを実際に活用し始めており、その金額は年々増加を続けている。ECが拡大を続ける裏で、それは見た目の数字以上に大きな構造変化を伴っているのである。そのことを見逃してはならない(「月刊アイティセレクト」掲載中の好評連載「新世紀情報社会の春秋 第四回」より。ウェブ用に再編集した)。

※1「AIDMA」とは、米経済学者ローランド・ホールが提唱した「消費行動」の仮説を指す。あるモノについて、知ってから買うまでにおける消費者のコミュニケーションの反応プロセス(心理的プロセス)を示すものとして、最も有名なもの。「Attention(注意)→ Interest(関心)→ Desire(欲求)→ Memory(記憶)→ Action(行動)」から成り、それぞれの言葉の頭文字をとって名付けられた。その法則は商売の基本とされる。

成川泰教(なりかわ・やすのり)

株式会社NEC総研 調査グループチーフアナリスト

1964年和歌山県生まれ。88年NEC入社。経営企画部門を中心にさまざまな業務に従事し、2004年より現職。デバイスからソフトウェア、サービスに至る幅広いIT市場動向の分析を手がけている。趣味は音楽、インターネット、散歩。


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