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» 2006年08月07日 08時00分 公開

生活経済におけるデジタル諸相1[購買プロセスと情報] 第3回:CGMで発信される情報の存在意義

CGMの情報が消費者の購買行動に影響するECサービスが拡大する中で、その情報はその購買プロセスにとってどのように関わってくるのだろうか。

[成川泰教(NEC総研),アイティセレクト]

商品開発への回帰

 最近のECでは、検索サービスを核にした新たな広告手法が発達するとともに、CGM(Consumer Generated Media)と呼ばれる生活者自身による商品レビューやリコメンドが、いわゆるアフィリエイトプログラムとして購買行動に連動するようになった(生活経済におけるデジタル化の諸相1[購買プロセスと情報] 第2回:EC拡大の裏で起こる構造変革参照)。そのようなスタイルは、今後の消費行動の主流となるのだろうか。

 答えはおそらくイエスだ。ただその際に、個人消費におけるEC化率がどこまで上昇するかを考えるのは、ECサービス事業者の売上規模を予想するという目的以外にはもはやあまり意味がないように思える。というのも、「AISCEAS(アイシーズ)」(※1)の各プロセスのなかで購入のところに最も大きな経済的意味があるという状況ではなくなってきているからである。もちろん現状では、依然として購入ボタンを所有している人に手数料などの収入につながる事業機会がある。ただ、これから重要になってくるのは、情報をどこからでも自由気ままに手に入れられるようになった生活者を、果たして無事に自社の商品あるいは自社の購入ボタンに誘導することができるのかという問題である。

 ここで大切なのは、新しいプロセスにおいて、生活者が入手する情報の多くはサプライサイドのコントロールが効かないものだということである。CGMが生活者になんらかの利益をもたらすことは明らかなのだが、それがメーカーや販売などの事業者にとって味方なのか敵なのかを判断するのは非常に難しい。実は、それが消費行動との関係におけるCGMの本質なのである。

 アフィリエイト広告などは基本的に商品をリコメンドする立場からのものであるため、事業者にはまだ都合が良いものだが、いろいろなECサイトに掲載されている商品レビューの場合、読んでみると、その内容の多様性に驚かされる。評価のレベルは人によってさまざまだし、それ以前に何を評価の対象とするかが人によって違うため、とても一様に比較できるものではない。さらにはブログやSNS、掲示板などで語られるものとなると、商品そのものを正しく認識しているか否かとは無関係に語られていたり、従来の広告手法とは全く正反対の意味で、何らかの理由で意図的に商品のイメージを傷つけようとしているものも散見される。

 そのような問題は確かにあるのだが、少し突き詰めて考えてみると、結局は商品やサービスそのものとそれに関連する情報の関係において、情報がどこまで力を持ち得るかということではないかと思う。当たり前のことであるが、情報は商品やサービスの実体あっての存在である。そして、その実体とは離れて存在できるものではない。極論すれば、そうした情報を制する最も重要なカギは、インターネットの仕組みにあるわけでもAISCEASにあるわけでもなく、商品やサービスそのものにあると考えるべきだろう。

 AISCEASの重要性の高まりを機会ととらえて新たなサービスを考える事業者は、ともすれば、どうすれば優れた意見や評価を持つ生活者を集められるかという方ばかりに傾きがちだ。だが、これから重要になってくるのは、それらの情報をどうすれば商品の作り手やサービスの担い手である事業者に伝えるかということではないだろうか。もちろん、その目的はよりよい商品やサービスの開発である。購買プロセスの議論は、商品やサービスそのものと結び付けて考えることで初めて意味あるものになるのであって、決してそれ単独で存在するものではないのである(『月刊アイティセレクト』掲載中の好評連載「新世紀情報社会の春秋 第四回」より。Web用に再編集した)。

※1 「attention」(注意)、「interest」(興味や関心)、「search」(検索)、「comparison」(比較)、「examination」(検討)、「action」(購買)、「share」(情報共有)の各頭文字で構成した造語。インターネット時代における、生活者の購買行動を示す(生活経済におけるデジタル化の諸相1[購買プロセスと情報] 第2回:EC拡大の裏で起こる構造変革参照)。

成川泰教(なりかわ・やすのり)

株式会社NEC総研 調査グループチーフアナリスト

1964年和歌山県生まれ。88年NEC入社。経営企画部門を中心にさまざまな業務に従事し、2004年より現職。デバイスからソフトウェア、サービスに至る幅広いIT市場動向の分析を手がけている。趣味は音楽、インターネット、散歩。


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