「工場長にどう報告すればいいんだ」と詰め寄られた原価管理担当者のアイデア(2)(2/3 ページ)

» 2006年08月01日 16時00分 公開
[北山一真,ITmedia]

コストを元にした売価設定

 まずコストと売価の関係を整理したい。どの企業においても、コストを保有している単位はモノの構成となっているだろう。それは造りの単位や実績収集や原価計算のためである。

 しかし、前述の通り、売価は仕様や機能ベースで議論されて決まる。売価設定は要求仕様単位であり、コストは製品構成単位とされており、検討単位が異なっている。そして問題をさらに複雑にしているのが、ほとんどの企業においては図面を作成しないと構成(E-BOM)が決まらないことである。もちろん、売価を設定する構想段階では図面などはない状態であるため、原価算出が不可能な状態になっている。

 営業は「早く原価を計算しろ」というが「原価は図面がないとダメです」と言い返すのが悲しくも日常的なやり取りだ。そして営業は設計に「作図しろ」というが、設計は「作図には10日掛かる」とスピード感がない。

 その結果、営業が仕方なく、感覚で売価を設定してしまうということになる。つまり、「図面依存」というほとんどの企業が陥る問題にぶつかるのである。

 そこで、要求仕様と製品構成の関係を整理するには、データモデリングの手法が有効である(図2-1)。これは、仕様項目からどのような構成が引きあたるかの関係を解いていく手法だ。

図2-1:データモデリング(仕様と構成の関係)

 情報を整理することによって、標準品の設定単位や仕様項目の決め方を改善できる効果は大きい。この関係を整理するのは根気のいる作業ではあるが、確実に効果が出るのでぜひ行ってもらいたい。この関係を整理することにより、前述の例の防水機能という追加機能に対して構成が決まり、コスト算出が可能となる。図面を作成していない状態なので完全な精度とは言わないが、標準的な構成が引き当たるため、大まかなコストを算出できるようになる。

妥当な売価設定とは

 データモデリングの手法により、要求仕様から製品構成を導き出す方法を述べた。しかし、データモデリングだけでは不十分なケースがある。それはすべて(または主要部分)の仕様が構想段階や開発の上流段階で決まっていない場合である。

 製品構成が引き当たるだけの仕様が決まらないことには、使えないケースも出てくる。そこでモデリングに加え、統計解析を用いた手法が有効となってくる。特に統計解析の中の重回帰分析を用いた手法を紹介したい。重回帰分析について今回は概要を説明したい。

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