インタビュー
» 2006年08月04日 12時07分 公開

日本電気執行役員社長 矢野 薫氏――「ITとネットワークの融合に向けて、NECならではの新しい価値を生み出す」 (1/2)

今年4月以降、ITとネットワークの融合を目指して、「NGN(次世代ネットワーク)」をキーワードに新たな事業戦略を打ち出しているNEC。その陣頭指揮を執る矢野薫社長は「NGNの時代こそ、NECの真価が発揮できる」と力を込める。そう言い切る根拠はどこにあるのか。4月1日付で新社長に就任した矢野氏に直撃インタビューした。

[松岡功,アイティセレクト編集部]

 矢野氏は、金杉明信前社長の病気療養に伴って、4月1日付で副社長から社長に昇格した。NECの「本流」ともいわれる通信分野出身のエンジニアで、3度の海外勤務を経験した国際派でもある。社内では「いずれ社長になる人」と言われたこともあったが、入社年次では後輩の金杉氏が3年前に登板し、「可能性は薄れた」とみられていた。

 とはいえ、副社長時代は通信事業の統括責任者として、社長の海外IR(投資家向け広報)などにも同行。社長補佐として社業全般を知る立場から、突然の社長交代ながらも満を持しての登板という印象が強い。

 それを示したのが、5月29日に行われた経営戦略説明会である。矢野氏はNGN事業を今後の最重点戦略とし、「NGNは単に通信事業者だけでなく、企業や個人へも事業機会を広げる」とその波及効果の大きさを訴えた。そして「NGNによってインフラが変わると、その上で構築されるシステムも変わる」とし、ITとネットワークの両方の技術や製品を持つNECの総合力が生かせると強調。NGNをキーワードに掲げた上で、「NECは、今までは構造改革を集中的にやる段階で、ともすれば内向きに力を使いがちだった。これからはその力を外へ、顧客に向けて使いたい」と力を込めて語った。

 その後、その経営戦略の内容を株主や投資家、顧客、社員といったステークホルダーに説明して回り、6月22日には社長として初めての株主総会もこなした矢野氏に、まずは社長就任後およそ3カ月経過した段階での率直な心境を聞いてみた。

NEC執行役員社長 矢野 薫氏

携帯と半導体を黒字に今後の成長の芽はNGN

アイティセレクト 社長に就任されておよそ3カ月経過した今の心境はいかがですか。

矢野 NECが連結で売上高4兆8000億円、従業員数15万4000人の大規模な会社であることは当然分かっていましたし、社長がたいへんな激務であることも知っていましたが、いざ自分がなってみると、あらためてその責任の重さをひしひしと感じた3カ月でした。

アイティセレクト 突然の社長交代でしたが、満を持して、という印象があります。

矢野 金杉前社長の時からIR活動をかなり任されたり、さまざまな戦略立案や組織人事、予算遂行などの相談をして一緒になって考えてきましたから、実状は誰よりも知っているつもりです。ただ、最後に決断するのは社長ですから。これは相当の重責ですよ。

 私は金杉さんほどテキパキできるかどうか分かりませんが、皆さんの意見をよく聞いて、できるだけ衆知を結集してやっていければと思っています。ちょっと誤解されるかもしれませんが、私の仕事は社員の皆さんのチアリーダー、つまり応援団なんですよ。フィールドでがんばってくれているのは社員の皆さん。もちろん会社としての責任は私がとる。チアリーダーとして精一杯がんばれ、がんばれと応援し続けますよ。

アイティセレクト 5月29日に発表された経営戦略に対するステークホルダーの反応はいかがでしたか。

矢野 まず投資家の方々からは「不振の携帯電話端末と半導体の事業をどうするのか」「今後の成長の芽がないのではないか」といったご指摘をいただいていますが、すでにいろいろな場でもお話ししているように、携帯電話端末と半導体は早急に黒字化しますと。成長の芽についてはまさしくNGNですと。

 「NGNが本当にビジネスになるのか、よく分からない」との声も聞きますが、最も大事なポイントは、NGNが来るべきユビキタス社会のインフラになるということです。ユビキタス社会の到来を否定している方々は、もはや少数でしょう。NGNはそのインフラになる。そこでNECはNGNというインフラもさることながら、企業にも個人にも深く関わってくるユビキタス社会に求められるITも幅広くご提供していく。その意味では、NGNは単なるネットワークインフラではなく、その上でさまざまなサービスが展開される“サービスプラットフォーム”なのです。

 こうお話しするとまだまだ先のことに思われる方もいますが、すでにNECがお手伝いさせていただいた格好の例があります。NTTドコモさんのiモードがそれです。まさしくiモードというサービスプラットフォームをつくり、その上で多くの企業がそれぞれのサービスを展開しています。その意味でiモードは、NGNの初期的なコンセプトを実現したものだといえます。投資家の方々もこうしたお話をさせていただくと、理解していただけるケースが増えてきました。

アイティセレクト 顧客企業や社員の方々の反応は。

矢野 企業のお客様には、これからもっと具体的なソリューションをご提案していかないといけないと思っています。ただお客様の中でも通信事業者さんは、当社がNGNに名乗りを上げたことに対して、パートナー意識をより強く持っていただけているようです。

 社員には、これからNGNの時代、ユビキタス社会が到来して、ITとネットワークが本格的に融合していく中で、元来C&C(コンピュータ&コミュニケーション)を標榜してきたNECの時代がいよいよやってくるんだと。だから、昨年度までは会社全体の業績が落ち込んで悔しい思いをしてきただろうが、業績は必ずよくなるからもっと元気を出してやろうと発破をかけています。ここにきてそういう雰囲気が広まってきたのか、私の目からみて、みんなだいぶ元気になってきたと思いますよ。

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