浮き彫りになったEA導入の功罪崖っぷち!電子政府〜迷走する4500億円プロジェクトの行方・第2回(2/2 ページ)

» 2006年08月10日 08時00分 公開
[山崎康志+編集部,ITmedia]
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機能不全の総務省行管局

 ところが、土台となるシステムアーキテクチャがないところへ、各プログラムが無秩序に実装された結果、アプリケーション構造はジグソーパズルのように複雑に入り組んでしまった。何の改善も加えられないまま時間だけが経過していく。しかし、2005年3月の完成予定を過ぎても、一向に仕様が公開されないことに、導入する各省庁のCIO補佐官から不安の声が上がり始めた。

「プロトタイプは出来ているんでしょ」

「なぜ見せないんですか。どんな画面なんです?」

 昨年12月の「CIO補佐官等連絡会議」では、人事院の担当課長へ質問が相次いだ。しかし、人事院は「任せてほしい」の一点張り。電子政府全体を所管し、同会議の仕切り役である総務省行政管理局も事態を放置し続けた。あるCIO補佐官は憤りを隠さない。

「行政管理局の責任は人事院以上に重い。いったい彼らは何のために『予算削減可能性調査』をして来たのか」

 予算削減可能性調査とは、各省庁IT設備の事実上の予算査定である。毎年、来年度予算の概算要求が終わった後の10-11月、総務省行政管理局は財務省に代わって各省庁のIT予算をヒアリングし、結果を財務省へ報告する。当然、総務省行政管理局は人事院の開発失敗を知り得る立場にあり、早期に対策を講じなければならなかったのだ。

 しかし、総務省と財務省の、いわばIT予算査定のダブルスタンダードが責任の所在を曖昧にした。いや、事は人事・給与業務システムだけに留まらない。

 同じ府省共通システムの中でも、経産省が開発を担当する「予算執行等管理システム」、財務省の「官庁会計事務データ通信システム」、総務省の「調査統計システム」など多くの最適化計画は、画餅に終わる可能性を否めない。また府省個別システムには、社会保険庁の「社会保険オンラインシステム」のように、開発そのものへ疑念が指摘されている案件さえある。ある中央省庁のシステム担当者が指摘する。

「予算削減可能性調査が、1システムに7時間も8時間もかけてやっているのは、文言や図面の瑣末なチェックばかり。方式設計の評価がなければ、システム開発予算の査定などできるわけがない」

 方式設計―。これこそ最も時間と費用をかけるべきシステム開発の要なのだ。

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