結実したAMDのOpteron戦略

長らくIntelが支配してきた大手コンピュータのOEM分野に、AMDが次々と進出してきている。

» 2006年08月22日 17時17分 公開
[Jason Brooks,eWEEK]
eWEEK

 長きにわたってIntelの領土であった大手コンピュータOEMの分野に、Advanced Micro Devices(AMD)が大きく進出しつつある。

 1年余り前に掲載したコラムで、われわれはIntelを相手取ったAMDの独禁法訴訟への支持を表明した。これは、Intelが採用したとAMDが主張する反競争的戦術が、ITユーザーにとって選択肢の縮小、価格の上昇、技術革新の低迷という結果につながったという懸念によるものだ。

 裁判所が遠い将来に決定するかもしれない措置はさておき、プロセッサ市場における競争バランスが変化し、企業ユーザーが購入するハードウェアの選択肢が広がる状況へと動き始めたのは喜ばしいことだ。

 われわれはこの数週間、伝統的にIntelが支配してきた大手コンピュータOEMの分野でAMDが大きな前進を遂げているのを興味深く注目している。

 IBMは、これまで1機種のeServerモデル(この製品はeWEEKラボのテストで良好な成績を収めた)に限られていたAMDのOpteronプロセッサの採用を拡大し、5機種の新モデルに同チップを導入したLenovoでは、AMDプロセッサ搭載デスクトップシステムを投入しようとしている。これまでIntel一本槍だったDellまでもがAMDプロセッサを搭載したサーバを出荷する予定であり、また、AMDベースのノートPCも販売する計画も最近発表した。

 一方、Sun Microsystemsは以前から、Opteronベースのパワフルなワークステーション/サーバを次々と投入しており、既に同社独自のSPARCシステムは、おそらく同社が当初考えていたよりも苦戦を強いられているようだ。

 市場のバランス化が進むのに伴い、競争の激化によってどのような成果がもたらされるのか楽しみだ。特にわれわれが注目しているのは、グラフィックチップメーカーであるATI Technologiesの買収計画に伴うシステムオンチップ(SoC)をめぐる交渉で、AMDがどのような成果を引き出すかということだ。また、AMDがATIのブランドと技術の優秀な管理者になれるかという点も興味深い。

 AMDは以前、開発者とコンシューマーを意識した64ビット移行戦略を推進するという賭けに出た。この戦略では、広く普及したx86命令セットを拡張するという同社の狙いが奏功し、この分野で後れを取ったIntelも結局、EM64T(Extended Memory 64 Technology)で同社に追随した。

 AMDのタイムリーな賭けは、Opteronという形で成果をもたらし、同社の立場を大いに高めることになった。

 AMDがATIの技術の管理を引き受けるに当たっては、(グラフィック分野ではあまり目立たない)Intelが最近打ち出した、開発者/ユーザーに訴求する賢明な戦略にも注意を向ける必要がありそうだ。その戦略とは、自社の3Dグラフィックチップセットのドライバをオープンソースソフトウェアとしてリリースするというものだ。

 もちろん、AMDは正しい方向を目指して進み続けるというこれまでの路線を継続しなければならない。Intelは依然としてプロセッサの世界における最強企業であり、AMDよりもはるかに大きな市場シェアを持っている。しかも、AMDがどのような戦略を打ち出そうとも、Intelは必ず、それに対抗する戦略を練り上げてくるのだ。

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