IBM、ストレージサーバ「Turbo」ラインを武器にEMCを狙い打ち

IBMの新しいストレージサーバ製品である「ターボパワー」のラインアップは、同社の先行モデルばかりでなくEMCのサーバと比べても、パフォーマンスが格段に高く、システム管理機能がより強化されているという。

» 2006年08月23日 17時31分 公開
[Chris Preimesberger,eWEEK]
eWEEK

 普段のIBMは、ITストレージ事業における競合社について公に話すときでも具体的な社名は口にしないが、8月22日の新製品発表では、マーケットリーダーであるEMCをライバルとして意識していると明言した。

 IBMの新たな「ターボパワー」ストレージサーバ製品ラインアップは、同社の先行モデルばかりでなくEMCのサーバと比べてもパフォーマンスが格段に高く、システム管理機能も強化されていると、同社の広報担当は述べている。

 ニューヨーク州アーモンクに拠点を置くIBMはこのほかにも、最近になって提携関係を結んだNetwork Applianceと協力して開発した「IBM System Storage N7000」もリリースしている。

 N7000は、Network Applianceの技術に基づくIBMの統合型ストレージ製品ラインを補完する製品だ。同製品ラインにおいては、50名程度の従業員を抱える企業から大規模なデータセンターまでを対象とした、エンタープライズ向けのNAS(Network-Attached Storage)で利用するエンド・ツー・エンドのシステムや、iSCSI製品が提供されている。

 現在Network Applianceは、同様のストレージ製品に自社の製品名を冠して販売しているが、N7000シリーズはIBMブランド製品として製造する予定だと、前述の広報担当は説明している。

 「今回の(「Turbo」ラインと称される同製品ラインおよびN7000の)リリースは、(IBMが)ここ数年の間に行ったストレージポートフォリオの拡充の中でも、最も規模の大きいものだ」(同IBM広報担当)

 エンタープライズ向けディスクアレイの「IBM DS8000 Turbo」製品ラインでは、4Gbpsに達するFICON(Fibre Connection)スループットが実現されており、現行の一般的な製品と比較してI/O速度が2倍になっている。IBMの「Power 5」チップ上で稼働し、パフォーマンスは同社の旧モデルの15%増しだという。

 「かつてないほど貪欲に買収を繰り返した結果、EMCの創業当時の事業基盤は消滅の危機に瀕している。IDCによるマーケットシェア調査では、EMCがストレージ市場における支配的地位を失いつつあることが明らかになった。そのうえ、IBMが大企業のみならず中小企業(SMB)にも受け入れられるシステムを提供するようになれば、EMCの優位はさらに揺らぐだろう」(同IBM広報担当)

 42億ドル規模とされるディスクストレージシステム市場では、かつてはEMCとHewlett-Packardが優勢な立場に立っていたが、最近の業界レポートはIBMの堅調な成長を報じている。

 マサチューセッツ州フラミンガムのIDCによれば、2006年第一四半期におけるエンタープライズ向け外付けディスクストレージシステム市場では、EMCが21.8%のシェアを獲得し、これに次ぐHPのシェアが約18%、IBMが12%となったという。

DS8000 Turbo――1台のシステムに複数のストレージ層

 「IBM System Storage DS8000 Turbo」には、次のような特徴がある。

  • 階層ストレージオプション(Tiered Storage Options)

 ビジネス上の価値に応じてデータを分類し、データ管理を簡素化するために、1台のシステム内で複数のストレージ層を利用できるようになっている。ファイバチャネルドライブの第1層には、重要かつ頻繁に使用するデータを保管し、低コストなFATA(Fibre Channel ATA)ドライブが用いられる第2層には、使用頻度の低いデータを保管する。

  • ビジネス継続性およびディザスタリカバリのための3サイト制(Three-Site Business Continuity/Disaster Recovery)

 複数のサイトを併用して、データへのアクセスを維持している。効率的にデータを再同期化するフェールオーバおよびフェールバックモードに対応しており、いずれかのサイトで障害の発生が認められた場合は、迅速に変更を反映できるようになっている。

  • 独自のサーバ同調機能(IBM Server Synergy Features)

 I/Oの優先機能および「Cooperative Caching」機能によって、DS8000 Turboと「IBM AIX」ソリューションの連係が可能になり、クリティカルなアプリケーションの効率性およびパフォーマンスが向上する。

  • 「TPC(TotalStorage Productivity Center)」によるレプリケーション(TPC for Replication)

 「Metro Mirror」「Global Mirror」「FlashCopy」を一元的に管理できる。また、レプリケーションの過程を把握し、作業完了を確認することで、余計なコストのかかる失敗も回避できる。

 DS8000 Turboおよび機能改良が施された「DS6000」は、4年間の保証が付与されて、9月9日から販売が始まる予定だ。価格は、DS8000 Turboが21万3,400ドルから、改良版DS6000が10万2,600ドルから。DS8000 Turboへのサーバ同調機能の実装は、11月17日になる見込み。

Network Appliance-IBM「N」シリーズ――504Tバイトまでの大容量化が可能

 Network ApplianceとIBMが共同開発したNシリーズエンタープライズアプライアンスモデルには、「IBM System Storage N7600」および「N7800」が含まれる。ファイバチャネルおよびSATA(Serial ATA)ディスクに対応しており、同時通信可能なNASやiSCSI、4GbpsのFCP(FC SAN)を実装できる。また、35種類以上のソフトウェア機能強化が図られ、容量は504Tバイトまでスケールアップ可能だという。どちらの製品にも、シングルコントローラ版およびクラスタコントローラ版が用意されている。

 主な機能は次のとおり。

  • 「FlexShare」機能

 重要なビジネス上のニーズに関するパフォーマンスや、アプリケーションの重要度に従って優先順位を決定する能力を犠牲にせずに、処理能力を向上させることができる。

  • 「MetroCluster」機能

 クラスタフェールオーバ機能をプライマリサイトだけでなくリモートサイトにも適用し、プライマリサイトのデータをリモートサイト用に複製して、データを完全に最新な状態に保ち、なおかつ可用性を向上させる。こうした機能により、災害時においても、それまで行った処理をリモートサイトで瞬時に復旧できるのである。ディザスタリカバリ機能は、最大100キロメートル以内の距離にあるサイトで利用できる。

 Nシリーズのエンタープライズアプライアンスモデルは9月1日にリリース予定で、価格は14万500ドルから。Nシリーズのエンタープライズゲートウェイソリューションは9月22日からの提供開始となり、価格は11万3,500ドルから。

機能強化が図られたデータ保存製品

 「IBM System Storage DR550 V3.0」および「DR550 Express」は、データの長期保存や、規制およびコーポレートガバナンスによって求められるデータの保管を主な用途とする製品だ。「IBM System Storage DS4700」ストレージコントローラを追加し、ディスクストレージサブシステムとして「EXP810」を拡張利用できるようにしたことで、柔軟性、容量、コストパフォーマンスの面での改善が図られた。DS4700システムでは500GバイトのSATAドライブが利用され、4Gbpsのファイバチャネル技術も実装されている。

 すでに提供が始まっているシングルサーバ(簡易モデル版)は2万1,000ドルから。デュアルサーバモデルは9月15日にリリースされ、12万8,000ドルから。

「IBM System Storage DS4000」シリーズの拡張

 IBMは、同社のミッドレンジストレージサーバ「DS4000」ラインに、SMB向けの「IBM System Storage DS4200 Express Model」を追加すると発表している。また、DS4000ライン全般の製品にも、容量、速度、全体的なパフォーマンスを向上させる新機能を搭載した。

 新製品となるIBM System Storage DS4200 Expressは、8月25日から提供が開始される予定で、価格は1万1,474ドルから。

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