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» 2006年08月30日 16時00分 公開

ディザスタリカバリで強い企業を作る:「実例」に見る意外な落とし穴 (1/3)

筆者の経験を元に、ストレージシステムのディザスタリカバリを構築する際の落とし穴や注意点を紹介しよう。

[村上智,ITmedia]

本記事の関連コンテンツは、オンライン・ムック「ディザスタリカバリで強い企業を作る」でご覧になれます。


中小企業や部課単位での対策は?

 前回の記事で「ディザスタリカバリシステムを計画する際に経営判断は必須である」と述べた。情報システムに潤沢に投資を行える大企業の場合はもちろんだが、では、中小企業や大企業の中の一部門が単独で取り組む場合は、どのような指針の下に考えればよいのだろうか?

 中小企業の場合は大企業に比べ、些細な事件や環境の変化が経営に大きな影響を及ぼす。システムの復旧うんぬんとは無関係に、災害が倒産に直結することも考えられる。その観点からは、ストレージ「だけ」のディザスタリカバリは無意味であると言える。

 したがってこの場合は「素直に、損害保険のシミュレーションをすべき」となる。「洪水で工場が水没して工作機械が全滅しても、受発注管理や売掛金の管理は社長の頭の中に入っているので、工場が復旧できればいい」というのであれば、適切な損害保険の契約をした時点で、ディザスタリカバリは済んでいるようなものだ。

 しかし、それだけでカバーできない範囲もある。「受発注データや売掛金データがPCの中にあり、それがなくなると工場の操業が再開できないばかりか、債権の回収にも問題が発生する」というのであれば、PCのデータをバックアップすることに加えて、データを遠隔地に保管するか、リモートのデータセンターのファイルサーバにコピーしておくなどの方策が必要だ。

 一方、大企業の中の一部門ではどうだろう。企業全体としてのディザスタリカバリが確立されていて、基幹システムが合理的にリカバリされたからといって、基幹システムにあまり関係しない自分たちの日々の業務が破たんしてしまっては大問題である。往々にして経営陣は、基幹システムに関係しない現場担当者レベルの業務には、あまり関心を持たないものだが、現実にはこれらのデータが失われれば、業務に大きな支障をきたす。

 こうしたケースでは、「個人管理のデータを可能な限り排除し、データは基幹システムに管理させる」べきである。具体的に言えば、個人のPCにはデータを置かず、なるべく会社が「重要サーバ」と位置付けているファイルサーバにデータを格納する。

 これは、セキュリティの観点からも重要な事柄である。個人のPCに入っていたデータの消失によって業務に影響が出るのであれば、そのデータは立派な会社の財産であり、現場の人間がその事実を経営陣に理解させるべきだ。現場担当者レベルが使用するデータも、企業が取り組むべきディザスタリカバリの対象の含めることが大切である。

ある「トホホ」な事例が示す教訓

 次に、復旧時に発生しがちなトラブルと、その解決策について考えてみたい。この考察は、ディザスタリカバリの検討をする上では、経営判断の次に重要な要素である。

 どのような素晴らしいソリューションを用いていたとしても、必ず陥ってしまうトラブルの例を紹介しよう。

 数年前、台湾で大地震が発生したときの話である。当初、筆者はこの話を笑い話として知人から聞いたが、その後、ディザスタリカバリの案件に数多く関わるに至り、非常に大きな意味を持っていることに気付いた。

 その話というのは、大地震の後、いっこうに復旧しないデータセンターを、コンピュータメーカーのエンジニアが復旧作業のために訪問したときのことだ。彼は当初、コンピュータルームがめちゃめちゃに壊れていると想像していたそうである。災害から1週間以上経っても、OSすら立ち上がらないと聞いていたからだ。

 しかし、実際に現場を見た彼はがくぜんとした。ラックの位置が少々ずれて、ケーブルが外れている程度の被害しかなかったからだ。確かに、セーフモードやらシングルユーザーモードという画面が出て、OSは立ち上がっていなかったが。

 言うまでもなく、彼はあっという間にシステムの復旧を完了させた。データセンターのマネージャーたちからは英雄扱いである。しかし彼は「御社のシステム管理者の方々は何をやっているのですか?」と言いたい気持ちをこらえて帰路についたそうだ。

 ここで、読者の方々には、自分の立場になぞらえて考えてみていただきたい。

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