Google Appsは“噂のGoogle Office”じゃない

Googleが「Google Apps for Your Domain」でビジネスソフトに進出? それは違う。あれは皆が噂してきたMS Officeのライバル「Google Office」じゃない。

» 2006年08月30日 15時43分 公開
[Steven J. Vaughan-Nichols,eWEEK]
eWEEK

 各紙の見出しはこうだ――「Googleがオフィススイートをリリース」「最新情報:GoogleがアプリケーションバンドルでMicrosoftに対抗」「Googleがビジネスソフト市場に進出」。勘弁してくれ。「Google Apps for Your Domain」はそんなんじゃないんだ。

 誇大広告と信じられないほど不格好な名前の下にあるのは、前々からあった年中β状態のインターネットプログラムの一群だ。

 Gmail、Google Calendar、Google Talk、Google Page Creator――見慣れた顔だ。

 これは前から噂されていた「Google Office」じゃない。どの点でも、どんな意味でも、どんな形でも、Microsoft Officeのライバルじゃあない。それに何より、GoogleとMicrosoftの冷戦を過熱させるものではない。

 これはGoogleのMicrosoftへの単なる意趣返しだ。“悪の帝国”は8月半ばにWLE(Windows Live Essentials)のβ版を発表した。GoogleがGAYD(Google Apps for Your Domain)を発表したのは8月の最終週だ。

 製品発表ではないニュースを発表して競争を減速させるという古典的なMicrosoftの得意な勝負を他社がやるのはおもしろいが、GAYDもMicrosoftの実証済みの戦術と同じ問題を抱えている。何も新しい要素がないということだ。

 聞いてくれ。わたしはGmailが好きだが、熱中しているというほどではない。この言葉はわたしが知っている多くのビジネスパーソンの気持ちを集約している。SMB(中小企業)や非営利団体が電子メールのフロントエンドにGmailを使うとなれば、そうはいかないと思う。

 Gmailのインタフェースは革新的かもしれないが、これをうっとうしいと感じているユーザーをわたしはたくさん知っている。それに、Gmailが始まってからの2年間、何人ものCIO(情報統括責任者)から、Googleの手の内にある企業向け電子メールには絶対に夢中にならないという意見を聞いた。

 もしもビジネス用に新しくてもっといい電子メールインタフェースが欲しいのなら、LinuxではEvolutionを、WindowsではThunderbirdを試してみるといい。

 わたし自身はGoogle Calendarの方がずっと興味深いと思っている。社員10人未満の小さな企業でこれを使っているところもあるかもしれないが、だがその後は……もう一度言うが、わたしとしては、データが自分の手元にないのなら、少なくともアウトソース先の会社はコントロールしたい。

 Google Talkはどうかというと、優れたIM(インスタントメッセージング)クライアントではあるが、わたしが知っている企業では今なおAIM(AOL Instant Messenger)がIMの標準だ。

 Google TalkがオープンなIM標準をサポートしているのは評価するが、企業がそれを使って顧客や提携先と話せなかったら……どれほどの価値があるだろうか?

 最後はGoogle Page Creator。シンプルで静的なWebページを作成する使いやすいオンラインWebデザインプログラムだ。

 わたしがスタッフに自分のWebサイトを作らせるとしたら、WordPressなど使いやすいオープンソースのCMS(コンテンツ管理システム)を使うだろう。

 もっと豪華なものがよければ、Drupalがいい。

 これらのGoogleアプリケーションがダメなプログラムというわけじゃない。そうじゃない。それどころか便利だ。特にCalendarはよくできていて、全国に社員が散らばっているような場合には有用だ。

 だがGoogleよ、勘弁してくれ。これらのプログラムをパッケージにしたところで、ユーザーにとっては何も新しいことはない。それに、「Googleが企業向けに特別なものを提供している」と企業に思わせようとするのは、誤解を生む行為だ。

 GoogleがWritelyGoogle Spreadsheetsをバンドルする時が来たら、その時こそSMBや非営利団体にとって本当のニュースだと言える。

 大企業はって? まったく、現実を見たまえ。大企業にふさわしいオンラインソフト製品を提供しているところなんてない。Googleだってそうだ。

 Microsoft Officeに代わるものが本当に欲しいのなら、Googleがいつかそれを提供してくれるとは期待しないことだ。それよりも、8月28日現在ではStarOfficeかOpenOfficeに目を向けた方がいい。

 もしもMicrosoft Officeに「アップデート税」を払うのが嫌になったのなら、Googleではなくオープンソースこそその答えを持っている。

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