地方都市産業とITを考える――地の利を生かしてIT産業を誘致ソフトウェアファクトリー ルポ(2/2 ページ)

» 2006年09月05日 08時00分 公開
[柿沼雄一郎,ITmedia]
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 こうした背景から今日の沖縄経済は、特に情報通信産業に活路を見出そうとしている。実際に、近年の県内の情報通信産業は成功モデルとされている。県庁の発表によれば、その生産額は年間2千億円で、県内の製造業全体と肩を並べる。これを上回る産業は建設業の3千億円、観光業が4千億円となっているが、伸び率ははるかに高い。今夏行われた調査によれば、沖縄で情報通信産業に携わる人は1万5千人で、年間で見ると25%増となっている。雇用が増え、投資も活発に行われていることの証とも取れる。

 では、沖縄における情報通信産業は観光をしのぐことができるか。建設業がますます厳しくなる中、代わって支えることができるのだろうか。

 沖縄の情報通信産業を見たとき、課題は少なくない。県内のIT事業者の多くは経営規模が小さく、従業員数も全国平均の70%程度となっている。さらに一社当たりの売上は30%程度で、事業内容も自社ブランドではなく、下請け的取引が主だったものになっている。また、雇用者を生み出している原動力をコールセンターに頼っており、企業としての付加価値の面で課題も残る。

 花木氏は沖縄の例から、地方都市の「自立型経済」を達成するために情報通信産業は大きなポテンシャルを持つ欠かせないものだとし、そのためには、地域の特色をうまく生かした施策が必要になると指摘する。

 沖縄の特色は、人材が豊富、そして地震が少ないことである。さまざまな人材によって情報サービスやソフト開発を活発化でき、地震に強い基盤上に強固なインフラを構築できることが強みとなる。

 この二つを武器に開発拠点やデータセンター誘致などを進め、また国内オフショアの拠点として全国のIT産業と連動し、適切な役割分担を進めながら沖縄IT産業を牽引していきたいと花木氏は述べる。将来的にはITパークの建設なども視野に入れている。

 9月14日には、「新・沖縄情報通信産業振興のための研究会」報告会が開催される。研究会では沖縄県をはじめ各省庁、東京大学や琉球大学、NPOのフロム沖縄推進機構、沖縄セルラーやマイクロソフトなど官民が一つになった活動が行われており、当日は長期的なIT産業の振興をどのようにとり行っていくかというプロジェクトの活動報告も行われる。今後5年間に渡る沖縄振興計画の先導的役割を果たすものとして期待が持たれている。

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