本音を引き出す「バトンマーケティング」(1/2 ページ)

ブログやSNSでよく見かける「〜バトン」。このバトンをマーケティングに活用する動きがある。しかし、ほかの人に回していくこの仕組みは、チェーンメールのようなスパムなのだろうか?

» 2006年09月17日 13時50分 公開
[森川拓男,ITmedia]

 ブログやSNSに参加していると、「〜バトン」なるものを見かけることがある。これは、あらかじめ用意された質問文と投稿したブロガーの回答が記されているものだ。そして、末尾には決まって「このバトンを回す人を〜人書いてください」という記載があり、知人ブロガーのニックネームが書かれているのが通例になっている。要するに、リレーのバトンのように回していくことから、呼ばれているのだ。

 この「バトン」については、いろいろな意見がある。友人同士でつながって楽しいし、ブログのネタにもなるからいいという人もいれば、勝手に回されても困るという否定派もいる。特に、バトンの最後に回す人を複数指名することが多いことから、スパムの一種であるチェーンメールとどう違うのか? という意見もある。しかし筆者は、バトンとチェーンメールのようなスパムとは決定的に違うものがあると考えている。その理由は後述する。

 また、最近ブログを利用したマーケティングが一つの動きになっているが、これを一歩進めて、バトンを利用したバトンマーケティングというものがあってもよいのではないかと、筆者は考えている。実際、すでにマーケティング的に仕掛けられているバトンも存在する。あえてバトンとは書かず、派生として考えれば幾つかのものが思い当たる。本稿では、そのバトンマーケティングの可能性について説いてみよう。そこで知りたいのは、そもそもブロガーたちにバトンがどう受け止められているのかということだ。

 ここに、興味深い調査結果がある。gooリサーチが9月1日〜3日にかけて行われた「インターネット上の“バトン”に関する調査」である。

バトンは受け入れられているのか

 インターネット上のアンケート結果では、男性の数が女性の数を上回ることが多い。しかしこのアンケートでは、1092人の総数のうち、男性が472人、女性が620人と、女性の方が多いのが特徴だ。

 年代別では、30代が506人と最も多く、40代の321人、20代の239人と続く。10代はわずか26人となっている。ここで見えてくる傾向は、“バトン”の調査に対して反応するのが、どちらかというと高い年齢層だったことだ。筆者は若年層が多いかと思っていたのだが、意外に感じたところだ。

 さて、この中で「バトン」を知っているかの問いには、「知っている」と答えた人が371人で、およそ3分の1。さらに知っていると回答した中では、どのように知ったのかの問いに「ブログ」が229人、「SNS」が158人と大半を占めた。そして、実際にバトンが回ったかという設問に対しては、「回ってきたことがある」が197人と、わずかながら過半数を超えている。ここまでは、バトンというものに対して「受動的」に見てきた。

 問題はここからだ。つまり、「能動的」に、バトンを見るとどうなるのかである。

 実際にバトンが回ってきた197人に対して、回答したことがあるかを問うと、「回答したことがある」が164人と8割を超えている。つまり、バトンが回ってくると回答する人が多数を占めているということだ。

 そして、回答したことがある人は誰に回したのか。やはり「とても仲のよい人」が90人、「少し仲のよい人」が62人となっている。「知り合い程度の人」にも37人が回しているが、「まったく知らない人」には5人。それでも知らない人に回すというのは、知らない人でも簡単につながることができるブログの特性だろうか。だが、ここで注目すべきは「回したことはない」の22人だ。やはり、バトンに回答はしても、ほかに回すのはちょっと……、と考える人も多いのだろうか。ちなみに、かくいう筆者もその1人だ。

 ここまでアンケート結果を眺めて見ると、バトンというのはかなり受け入れられている、という印象がある。

 しかし、バトンに回答したことがある197人に、バトンについてどう思うのかを問うと、いちばん多かったのは「バトンのテーマによっては楽しいものもあれば、不愉快なものもある」の127人だった。確かに、バトンというのは千差万別であり、数多くの種類がある。趣味をテーマにしたものから、地域に根ざしたローカルバトン、そして恋愛バトンに至るまで、あらゆるジャンルを包括しているのが特徴だ。「楽しい」と答える人も42人いたが、「不愉快」も11人を数えた。

 このためか、バトンが回ってきたら回答したいかという問いに回答した895人の中で、「ぜひ回答したい」が43人に過ぎなかったのに対し、「テーマによっては回答したい」が503人と過半数を占めたのだろうか。

 この調査結果を見るに、テーマにもよるが、バトンは比較的ブロガーたちに受け入れられてきている、と見てもよいだろうか。しかし同時に、受け取ったバトンを回さない人も多いのだ。果たしてそれはなぜだろうか。

バトンとスパムはどう違う?

 かつて、「不幸の手紙」と呼ばれるものが流行したことがあった。「〜人にこれと同じ内容の手紙を送らないと不幸になる」と受取人に対して脅しをかけて増殖していく郵便物だ。もちろん、それを止めたからといって不幸になるわけではない。誰かが勇気を持って止めればよいのだが、「もしかしたら」という不安感を与えることでつながっていったのだ。これの亜種には「幸福の手紙」などがある。

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