こうした共同プランの確立は、ベンダーとの契約そのものに匹敵する重要性を有している。よってこの取り決めでは、プロジェクトの全分野における細部に至る事柄を可能な限り煮詰めておく必要があり、不明瞭な部分を残したり見逃していた事項があると、後に禍根を残すことになりかねない。
必要な書類を作成する際には、常に法務部からのアドバイスを得られるようにしておくべきである。さらにカスタマー/ベンダー形式の契約についての経験が豊富なコンサルタントを雇い入れて、書類作成の協力を得られればベストだろう。
共同プランには、最低でも後記の要件を取り込んでおく必要がある。
共同プランをまとめる際には、用いる文言にも注意をする必要がある。例えば「カスタマーを支援する」「サポートを提供する」「最善の努力をする」などあいまい性を残す表現は、問題発生時には異なる解釈をされる余地があるため、新たな論争の火種となる危険性がある。それを避けるには、可能な限り具体的な記述をするよう心がける。
ここでのプロセスは、共同プランに関する両者の合意が得られれば終わり、というものではない。完成したプランについては、双方の代表者による承認が必要である。その際にカスタマー側が注意すべきことは、ベンダー側で最終的な承認をする者が協定を結ぶにふさわしい権限を有している人物であるか、という点である。例えば、セールスマネジャーによる承認では十分だとはいえないだろう。
それではベンダー側が、「過去にそうしたステップを経た先例がない」「これまでのカスタマーはすべて標準契約の締結だけで了承した」という理由を持ち出して、共同プランの構築を受け入れなかった場合はどうすればいいだろうか? これもおうおうにして生じうるケースであるが、そのような主張を受け入れることは、何らかの問題が生じた場合に使える対抗手段を放棄することになり、自分のサイドが不利な立場に追いやられる危険性を意味する。
共同プランの構築にベンダー側が難色を示した場合に取りうるオプションは、別のベンダーを探すか、あるいは将来的な問題に対する自衛策を備えておくかの、いずれかとなるだろう。
ところで冒頭に紹介した事例の顛末だが、この場合は両方の当事者が事態は穏便に解決できると楽観視していたものの、結局は州側がプロジェクトの未完成分の責任を負うことになるだろうとのことである。仮にそうした穏便な解決策があり得るとしても、そこに至る以前に双方が損害を被っているのも事実である。両陣営とも訴訟費用を持ち出す必要に迫られたのはもとより、州側はプロジェクトが遅延され、ベンダー側も最終金180万ドルを受け取れなかったのであるから。そして信頼に傷がついたのは、双方にとっての痛手だろう。
このような厄介事の当事者になりたくないのであれば、自分が携わるプロジェクトについては、事前に十分な時間と手間を割いて、将来的に発生しうる問題に備えた防止策をあらかじめ講じておくことである。
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