カスタマーとベンダー間で責任分担を明確化しておくための契約および危機管理プランすべてのプロジェクトマネジャーへ(1/2 ページ)

プロジェクトに対する見解の相違によってITベンダーとの業務関係が打ち切られるというのは珍しいことではない。崩壊への道を回避するためにあなたがやるべきことは何なのかを明らかにしよう。

» 2006年09月21日 08時00分 公開
[John-Murray,Open Tech Press]

 プロジェクトに対する見解の相違によってITベンダーとの業務関係が打ち切られる、というのはおうおうにしてみられるものであり、実際こうしたケースを完全に回避するのは難しいが、事前にベンダーとの間で必要な合意を取りつけておくことで、ある程度は軽減できるものである。

 例えば「Wisconsin State Journal」で取り上げられた、ウィスコンシン州の管理当局とその契約ベンダーとの間で生じた事件も、こうした問題の一例である。これは、サーバおよび付属サービスのインストールに関する約700万ドルの契約において、州側が最終金180万ドルの支払いを差し止めたという事件であった。

 この契約においてベンダーは、一連の到達目標を達成するごとに、該当する報酬が支払われるものとされていた。州側の主張は、この契約条項をコントラクタ側が履行できなかったため、同社との契約を打ち切ることでプロジェクト達成に必要な責任を果たした、というものである。対するコンストラクタ側の主張では、作業の遅れは州側に責任があり、業務の遂行上必要な措置の実施、人員の雇用と訓練および、サーバ群の統合に必要な設備上の改善が当局により行われなかった、とされている。またコンストラクタ側の代表者は、指定された到達目標はすべて達成したと主張し続けている。

 この事例のようなケースは、かなりの頻度でほかのプロジェクトでも発生しうるものである。

発生の予想される問題点を洗い出す

 潜在的な問題点を特定しその対策を講じるという作業は、見過ごされがちな過程である。例えば、既に契約も締結されているし、その内容はプロジェクト当事者の双方が納得したものであり、契約ベンダーも優れた実績のある業者であるといった状況に置かれれば、誰しも「何も懸念することはないではないか」と思いたいところであろう。ところがこうした安易な思考は、何か1つがうまく進まなくなった場合、簡単に破たんする。いずれかの当事者の思惑に反することが生じると、事態は加速度をつけて崩壊への道を疾走するのである。

 こうした状況を回避する責任が誰にあるかというと、それは契約ベンダー側ではなく、カスタマー側つまりは貴方にあるのだ。ベンダー側の行う提案や作業の内容の基となる標準契約とは、本質的にベンダー側の利益を守るためのものでしかない。よって、仮に何らかの問題が生じた場合、そうした契約を基に自分の主張を通そうとしても、たいていはうまくゆかないものである。

 こうした現実を受け止めるのであれば、契約締結の前に潜在的な問題点を洗い出しておくことが、将来起こりうる問題を回避する有効な手法として機能することになる。つまりカスタマー側は、ベンダー側から提示される契約内容を余すことなく検討し、プロジェクトの進行に関するカスタマーとベンダー間の合意事項を具体的なプランとして確立しておくのだ。

 カスタマー側が抑えておくべき1つの基本ルールは、法務部による書面上での確認が済むまでは具体的な行動を起こさず、その後に法的な助言に従った措置を執っておくことである。このルールをおろそかにし、契約の締結段階で法務関係の人間を参加させておかないと、将来的に大きな危険を抱え込むことを覚悟しなければならない。

 考えておくべきは、法務関係の内容だけではない。プロジェクトを進める上での共同プランというものをカスタマーとベンダーとで検討しておく必要があり、そうしたプランの中には、個々の事項に関して責任を負うべき当事者の規定、プロジェクトで作成されるべき成果物のリスト、プロジェクトが完成したと見なす際の基準を定めておかなければならない。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ