もはやジレンマの「種」!? 「Yahoo! コンテンツストア」の未来ケータイルネサンスは起こるか 第5回(1/2 ページ)

MNPを見据えて先手を打ったのはヤフー。「Yahoo! コンテンツストア」は画期的な試みとして注目を浴びた。しかし、ここにきてそのビジネスモデルに矛盾が生じ始めてきたと見る向きがある。その根拠は、「Yahoo! ケータイ」の誕生にあった――。

» 2006年10月03日 08時00分 公開
[アイティセレクト編集部]

MNP施行には早くから照準を当てていたヤフー

 語へいを恐れずにいえば、奇しくも、携帯電話番号ポータビリティ(MNP、※1)開始を目前にして、キャリアによる検索サービス戦争が勃発した。それが逆に、MNP施行前における顧客サービスの拡充、さらには施行後の顧客獲得の目玉として利用されるようになっていることは、間違いないだろう。

 とはいえ、実際にはMNPに照準を当てて、早くから戦略を仕掛けていたところがあった。それはほかならぬヤフーである。その動きは、本誌でもかねて追ってきた(※2)。

 かいつまんで説明すると、ヤフーは2005年10月、「コンテンツポータビリティ」というコンセプトを掲げ、「Yahoo! コンテンツストア」を開設した。占いやゲーム、グラビアといった、ケータイのコンテンツをPCインターネットのサイトで買えるというものだ。最大の特徴は、全コンテンツの購入・決済手段に「Yahoo! ウォレット」を使っていること。つまり、ケータイのコンテンツ購入の際、キャリアを通さず、一ポータルサイトに支払うということである。これは、キャリアの絶対的な力でがんじがらめになっていた課金ビジネスを、あたかも横取りするような画期的な試みと見られた。

「Yahoo! コンテンツストア」の画面

 それが意味するところは、MNPが施行されてユーザーがキャリアを変えても、契約し直すことなく同じコンテンツプロバイダー(CP)のサービスを受けられる仕組みということである。MNP施行でユーザーがキャリア間を移動することを見据えたビジネスモデルなのである。

コンテンツポータビリティは夢物語か

 しかし、そんな「コンテンツポータビリティ」という概念が、ともすると夢物語で終わってしまうかもしれない。

 その理由としてまず、「Yahoo! コンテンツストア」での購入においてユーザーに二の足を踏ませていることがある。「Yahoo! ウォレット」を利用するのに、クレジットカード情報の登録が必要になるということだ。

 「『Yahoo! ウォレット』を使った決済は、ユーザーにとってハードルが結構高いものだと感じている。ケータイでコンテンツを買うのにクレジットカード情報を入力するというのは、結構負荷が高いという調査結果が出ている」(ヤフーのモバイル事業部企画部の久保田紀之氏)

備考

*1 本稿では、キャリアは携帯電話事業者を指す。現時点ではNTTドコモ、KDDI(au)、ボーダフォン(10月1日からソフトバンクモバイル)の3社になる。PHSのウィルコムは含んでいない。

*2 本稿における「携帯電話」「ケータイ」の使い分けについては、文脈や発言内容などに応じて変えている。例えば、「携帯電話事業(者)」としたり改まった発言である場合は漢字表記にした。基本的には、「携帯電話」という端末そのもの、手段、事業、分野などすべてにわたってカタカナ表記とした。

*3 本稿では、NTTドコモの「iモード」、KDDI(au)の「EZWeb」、ボーダフォンの「Vodafone live!」については「(ケータイの)インターネット」、パソコンなどで楽しむ、一般のインターネットを「PCインターネット」と称した。

*4 本稿中の数値・事象などは、例外を除き、すべて8月16日時点のもの。


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