Office 2007スイートに加わるGroove、躍進のチャンスを生かせるか(1/2 ページ)

コラボレーションソフトウェアのGrooveは2006年末に躍進のチャンスを迎える。Grooveのコンポーネントが初めてOfficeスイートの一部として出荷されるためだ。ただし、将来的な可能性を見出せるかはまだ定かではない。

» 2006年10月12日 07時00分 公開
[Rob Helm,Directions on Microsoft]
Directions on Microsoft 日本語版

 コラボレーションソフトウェアのGrooveは、2006年末にリリースされるOffice 2007スイートの一部としてその主要コンポーネントが出荷され、躍進のチャンスを迎える。Grooveはクライアントアプリケーションと、サーバアプリケーションおよびオンラインサービスのセットで構成され、複数のユーザーが仮想ワークスペースでデータを共有しながらコミュニケーションや作業を行えるようにする。Grooveを利用すれば、少人数のグループ、特に部門の枠を超えたグループが短期プロジェクトで共同作業を進めやすくなる。次期リリースのGroove 2007製品ラインではOfficeとの連携が向上するが、大企業は、Microsoftによる今後の投資額がGrooveより大きくなる可能性がある既存コラボレーション技術とGrooveとを比較評価しなければならない。

少人数のグループが手軽にコラボレーションできる

 最も目を引くGroove製品は、次期リリースでGroove 2007に名称変更されるGroove Virtual Officeクライアントだ。このクライアントでは、共有されるファイルやデータ(カレンダーなど)を保持する仮想ワークスペースを使って、グループが共同作業を行うことができ、グループメンバー間で掲示板やテキスト/オーディオチャット、インスタントメッセージング(IM)などのコミュニケーションツールを利用できる。

 ワークスペース内のデータやファイルは、各グループメンバーのクライアントコンピュータに保存され、変更が加えられるたびにこれらのコンピュータ間で同期される。同期のための通信では、暗号化によってデータが傍受から保護されるようになっている。同期はファイアウォールを越えて行われ、グループの一部のメンバーがオフラインでも実現される。その仕組みは、変更をキューに保存し、コンピュータがオンラインに復帰したときにファイルを更新するというものだ。

 Grooveは、少人数のグループ(最大30人まで)のプロジェクトで、共有ファイルやデータが頻繁に変更される場合や、グループメンバーが全員同時にネットワークに接続するとは限らない場合(メンバーが複数のタイムゾーンで働いている、あるいはネットワーク接続の信頼性が低いなどの理由で)、グループメンバーがサーバを共有していない場合、サポートを提供するIT部門がグループメンバー間で共通でない場合を想定して設計されている。これまでGrooveは、緊急事態が発生し、さまざまな政府機関の役人が特別チームを組んで情勢の推移に迅速に対応しなければならないといった状況を活躍の場の1つとしてきた。またGrooveは、ビジネスパートナーやベンダーと共同で仕事をするのにも役立つ。例えば企業は、PR会社と連携して自社のニュースを迅速に発信したり、投資銀行や法律事務所と合併について協議したりする場合にGrooveを活用できる。

 Grooveはこうした場合に、既存の幾つかのコラボレーション方法よりも優れた機能を発揮する。Grooveでは電子メールと同様に、グループメンバーがファイアウォール越しでも、あるいは一部のメンバーがオフラインでも共同作業ができるだけでなく、共有ドキュメントや共有データへの変更を、電子メールの場合より効率的に調整できる。また、GrooveではWindowsのファイル共有と同じように、ユーザーはデータやドキュメントをオフラインで利用して、後で同期できる。だが、Grooveのトラフィックはファイアウォールを越えることができるため、中央でファイル共有をホストする必要がない。さらに、Grooveのワークスペースでは、Windows SharePoint ServicesのWebベースのチームサイトや、Exchangeのパブリックフォルダと同じように、ファイルと一連の構造化データ(カレンダー、タスクリスト、入力済みのフォームのデータレコードなど)を1カ所に置いて利用できる。だが、Grooveのワークスペースは、中央サーバでホストする必要がなく、オフラインのユーザーでも利用できる。そしてGrooveは、インスタントメッセージング(IM)ツールのように、誰がオンラインか表示し、テキストメッセージング機能も提供する。だが、Grooveはより詳細なプレゼンス情報(例えば、特定のワークプレースで誰が作業中かなど)を提供し、ドキュメントやデータの共有をIMより高度にサポートする。

見かけ上はP2Pシステム

 Grooveはバックエンドでプロプライエタリなメッセージキューイングプロトコルを使って、通信トラフィックを伝送し、ユーザー間でワークスペースの同期を行う。ユーザーにはGrooveはピアツーピア(P2P)システムのように見えるが、Grooveはサーバに依存している。具体的には、リレーサーバが、Grooveのメッセージをファイアウォールを越えて転送し、オフラインのユーザーのためにメッセージを保存しており、管理サーバが、Grooveユーザーのディレクトリの保守とバックアップ、ユーザー認証、暗号鍵交換のサポートを行っている。

 Microsoftのデータセンターは、「非管理」ユーザーのためにリレーサーバと管理サーバをホストしている。非管理ユーザーとは、Grooveクライアントを導入し、組織からの監督をまったく受けずに利用するユーザーだ。だが、企業はリレーサーバと管理サーバを管理して、Grooveの使用状況を監視し、セキュリティを高め、社内ポリシーを強制することができる。企業がGrooveを管理しようとする場合、選択肢は主に2つある。

  • Groove Enterprise Services(現行のGroove Hosted Servicesの次期リリースでの名称)の利用

 このサービスは、MicrosoftがGrooveのリレーサービスと管理サービスをホスティングするもので、サービスに加入した顧客に提供される。顧客はこのサービスを利用して、自社のGrooveディレクトリのコントロール、Grooveユーザーアイデンティティの登録と削除の管理、パスワードの再設定、パスワードポリシーの強制、そのほかのセキュリティポリシーの強制(例えば、Grooveトラフィックが社外に送信されないようにするなど)などを行える。また、加入顧客はリレーサービスについてサービスレベルの保証を受けられる。

  • Grooveサーバの自社運用

 Grooveサーバを自社で運用することで、企業はGroove Enterprise Servicesで可能な管理をすべて実現できる。それに加えて、GrooveディレクトリとローカルのActive Directoryインスタンスの同期、Windows PKI(Public Key Infrastructure)を使った暗号鍵の発行と削除、クライアントのGrooveトラフィックのロギングによる記録保持義務への対応なども可能になる。また、サーバを自社で運用する企業は、Groove Enterprise Data Bridgeサーバにより、Grooveのワークスペースを中央でバックアップすることもできる。Groove Enterprise Data Bridgeサーバの基本機能は、ワークスペースのデータを読み書きする「ボット」(Grooveの自動プログラム)をホストすることだ。さらに、Enterprise Data Bridgeは、ワークスペースと社内アプリケーションの間でデータを同期するためのカスタマイズ可能なプラットフォームも提供する。例えば、企業は、販売チームのワークスペースとERPシステムの間で商品カタログの同期を取るEnterprise Data Bridgeアプリケーションを作成するといったことができる。

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