自前のインフラ展開を――KDDIが東電の光ファイバ事業統合

KDDIと東京電力は10月12日、東京電力の光ネットワーク・カンパニー事業を2007年1月1日付けで分割し、KDDIに継承、統合することを発表した。

» 2006年10月12日 20時32分 公開
[高橋睦美,ITmedia]

 「NTT経由ではなく、自前でファイバを持てることにより、きっちりサービスの品質を保つことができるし、NTTとは違うサービスを展開していくこともできる」――東京電力の光ネットワーク・カンパニー事業を統合することを明らかにしたKDDIの代表取締役社長兼会長、小野寺正氏は、発表会の場でこのように語った。

 KDDIと東京電力は10月12日、東京電力の光ネットワーク・カンパニーの事業を2007年1月1日付けで分割し、KDDIに継承、統合することを発表した(関連記事)。両社はまた、2007年1月1日をめどに、光ファイバケーブルなどの建設、保守を受託する合弁会社を設立することに向け検討することも表明している。

 これにともない、光ネットワーク・カンパニーに関連する顧客契約はKDDIに継承される。ただし、「TEPCOひかり」利用者には、引き続きKDDIからISPを通じてサービスが提供されるという。

 両社はこれまでも、NTTグループに対する対抗軸を形成するという目的で、通信事業に関して提携関係を結んできた。2005年10月には、両社のFTTH網を相互接続し、将来的に統合するほか、東電の子会社であるパワードコムをKDDIが合併することを発表(関連記事)。これを踏まえて2006年5月、統合ブランドの新サービス「ひかりone」を発表していた

 東電の光ファイバ事業統合によるメリットは、「自前でエンドツーエンドのサービスをきっちり提供できること」だと小野寺氏は言う。「NTTのダークファイバを使うとNTTのベースでしかサービスを展開できない。当社の意志でネットワークを構築できるというメリットは大きい」(同氏)とし、ファイバ敷設のペースや設計に自由度を持てる点が大きいとした。

 また、他社にインフラを頼るという不安定要素を解消できることに加え、ダークファイバを借りる場合に比べコストを削減でき、「コスト面で競争力を担保できるようになる」(小野寺氏)のも利点という。

 ただ、これで東京電力が「光ファイバ事業から撤退するわけではない。光ファイバの構築、保守といった面でノウハウを持っていることから、今後も新会社で主力となって協力していく」(東京電力の取締役社長、勝俣恒久氏)

 光ファイバ事業統合後の新たなサービス展開としては、KDDIのau携帯電話を組み合わせたサービスが考えられるほか、トリプルプレイサービスを通じて実現されているマルチキャストを通じたIPテレビ電話の配信などが考えられるという。また、東京電力がノウハウを積み重ねてきた高速電力線通信(PLC)についても事業化を検討していく。

 「家電やホームセキュリティ、検針や省エネコントロールといった分野に関して、携帯と光ファイバを組み合わせて何かできないか検討していく」(勝俣氏)

 なお、TEPCOひかりサービスについては「既存の顧客に迷惑をかけることはしない」(小野寺氏)形で当面継続していくが、将来的にはGE-PONテクノロジをベースにしたひかりoneに一本化していく方針だ。

 KDDIでは今回の事業統合によって、首都圏のFTTHサービスエリア内で3割のシェア獲得を目指す。国内他地域における電力会社との協業についてはまだこれからの段階だが、「このモデルをきっちり構築して、他の電力会社とのアライアンスも進めていきたい」と小野寺氏は述べている。

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