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» 2006年10月17日 07時00分 公開

夢工房を追う 第2回:W-ZERO3の仕掛け人が、あの行列の朝を振り返る (2/3)

[三浦優子,ITmedia]

 「自信をもって発売する製品ではあったものの、予約販売になるし、発売開始と同時にお客さんが来てくれるとは限りません。八剱にはそれを説明しましたが、本人はそれでもいいというので、それではと発売記念イベントを開催することを決めました」

 東京・ビックカメラ有楽町店の店頭にイベントスペースを設けて、発売記念イベントを開始することにしたものの、この時点でもお客さんが並ぶとは考えていなかった。

 「お客さんが一人もいなかったら格好悪い。その時は、自分達が並ぼうかと社内では話していたんです」

 ところが、東京・新宿のヨドバシカメラには発売前日の営業時間中から並び始めるお客さんも出てきた。

 「その連絡を受けた時には、ほっとしました。とりあえず、発売開始時にお客さんが一人もいないということはなさそうだと……」

 そして発売日当日、ニュースになるほど大勢の人が並んだ。ビックカメラ有楽町店のイベントも大盛況となった。

 「あの盛り上がりは狙ってできるものではないと思います。もちろん、ウィルコム社員がサクラとして並ぶ必要なんてまったくありませんでした」

 発売当日、W-ZERO3を求めて行列する人を見た須永氏や、一緒に開発を行ったシャープのスタッフのそのときの思いは、OSを提供したマイクロソフトのサイト上でビデオ画像が紹介されている。行列を目の当たりにした開発者ならではの率直な思いが伝わってくる。

携帯電話と違う価値アピールをWindows Mobileで

 好調な売れ行きとなったW-ZERO3を受けて、7月27日に発売されたのが「W-ZERO3[es]」だ。

 W-ZERO3と、W-ZERO3[es]を見比べてみると、初代W-ZERO3は電話というより、情報端末らしい形状であるのに対し、[es]は電話らしい外観をしている。ウィルコムのような通信キャリアが発売する機器としては、こちらの方が「らしい」感じがする。

 しかし、須永氏は、「最初に[es]を発売することは絶対にできなかった」という。

 「原因は価格です。ご存じの通り、携帯電話は発売から数カ月すると1円で売られてしまう商品なんです。W-ZERO3はコストから考えても1円で売ることはできません。つまり、発売から時間が経っても、『この商品は携帯電話とは違う価値を持っている。価格が下がらなくても納得できる』とお客様に思ってもらう商品にしなければなりませんでした」

 携帯電話との違いを明確にするために、初代W-ZERO3は電話機とは違う形状とすることにこだわった。見た目が携帯電話というより、PDAに近いものであれば、店頭で店員が説明しなくとも価格の違いを納得してもらいやすくなるからだ。

須永氏 W-ZERO3[es]を手にする須永氏

 しかも、OSとしてWindows Mobile 5.0 MSFP、ソフトウェアとしてExcel Mobile 、PowerPoint Mobile、Word Mobile 、Windows Media Player 10 Mobileを搭載している。Windows Mobileの搭載により、W-ZERO3=小さなパソコンというイメージを作ることができた。

 「Excel、Wordといったソフトは、パソコンに搭載されています。搭載していないものよりは、搭載したものの方が高価であることも自分でパソコンを買ったことがある人であれば認識しています。搭載OSとして、Windows Mobileを選択したのは、携帯電話とは違う価値観を理解してもらうためには、最適のものだったと思いますね」

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