快適なワイヤレスオフィス実現に必要な「ワイヤード」の視点無線LAN“再構築”プラン(2/3 ページ)

» 2006年11月01日 07時00分 公開
[大水祐一,ITmedia]

無線LANには配線のソリューションが不可欠

 こうしたシステム構成以前に、企業の無線LAN導入では避けて通れない検討要素がある。いかに配線を持っていくか、という検討だ。まさに“ワイヤード”である。

 無線LANで配線の検討というと、少し不思議に思う方もいるかもしれない。しかし、アクセスポイントまではLANケーブルを延ばして接続しなければ、無線LANは機能しない。

 無線LANのアクセスポイントを設置する場所を考えてみよう。障害物を避け、多くの端末に電波が届くようにするため、壁面や柱の上部、あるいは天井などに設置するのが一般的だ。だが、そのような場所には通常、LANの配線はない。そこで、新規の配線工事を行うことになる。したがって、無線LAN導入を実現する上で配線工事の検討は軽視できないのである。

 配線と同様に悩ましいのが、電源の問題だ。ケーブル以前に、そもそも電源がなければアクセスポイントは動作しない。そして配線と同じくアクセスポイントの設置個所にコンセントは用意されていないのである。かつてはここにもワイヤードが必要だった。だが、こちらはうまい具合に解決策が登場した。イーサネット給電(PoE:Power over Ethernet)機能付きLANスイッチである。イーサネットのUTP(非シールドより対線)ケーブルを使って電力も供給してしまおうというものだ。

 現在、多くのアクセスポイントはこのイーサネット経由の受電機能を持っているので、給電に対応したスイッチをラック側に設置すれば、電源供給の問題は解消する。まさにPoE機能付きスイッチは、ワイヤレスオフィスを支える“縁の下の力持ち”なのである。

リピータハブにすぎない無線LAN

 無線LANを快適に活用するためには、ワイヤードのLANとは異なる媒体の特性を知っておきたいところだ。現行の無線LANは、利用帯域を「最大54Mbps」と銘打っている。しかし、この帯域は1台1台の端末が占有できるわけではない。同じ周波数(チャンネル)を使う端末間で、54Mbpsを共有して使うことになる(図2)。

図2 図2●無線LANはリピータハブ

 ワイヤードのLANの世界では、LANスイッチが一般的となり理論的には100/1000Mbpsの帯域が確実に保証されている。速度が出ないとすればLANスイッチが接続されるバックボーンの性能の問題であって、アクセス部分にボトルネックはない。

 しかし、無線LANは違う。LANスイッチが登場するはるか以前に使われていたリピータハブの環境のままだと思えばいい。しかも電波の品質が悪くなれば伝送エラーが増え、接続速度は下がっていく。いわば物理層が保証されないリピータハブなのだ。

 無線LAN対応携帯電話の登場で、最近は無線LAN上でVoIP(Voice over IP)を導入する検討も増えている。だが、無線LANのこうした特性を考えれば、高い伝送品質が必要なVoIPを実現する難しさが理解できると思う。

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