節目を迎えたOSDLの新たな活動方針は「開拓と支援」

まもなく7年目を向かえるOSDLが新たな活動方針として掲げたのは、「Extending New Markets」と「Bridges to Communities」の2つ。従来と何が変わるのかをスチュアート・コーエンCEOが語った。

» 2006年11月08日 15時01分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

「開拓と支援」――OSDLのCEOであるスチュアート・コーエン氏は、誕生からまもなく7年が経とうとしているOSDLの新たな活動方針をこのように評した。

 ボードメンバーの来日に合わせて11月8日に開催された記者会見で、同氏が掲げたキーワードは、「Extending New Markets」と「Bridges to Communities」の2つ。それぞれ企業におけるLinux/OSSの採用の促進と開発者コミュニティーの支援に注力していくことになる。

 このように新たな活動方針を示した背景には、市場におけるLinux/OSSの普及がある。コーエン氏によると、Linuxのシェアはインストールベースで20%、市場としては700億ドル相当にまで成長したことで、当初の目的であるエンタープライズコンピューティングにおけるLinuxの採用加速はほぼ達成されたと判断し、新たな指針を打ち出す必要があると考えたという。

コーエン氏。GPLv3をめぐる騒動については、「FSFと協調し、GPLv2とGPLv3が同一のサーバ内で矛盾なく存在できるようにしていきたい」と述べるにとどめた

 開発コミュニティーの支援については、同日に発表されたLinuxカーネルに関する技術文書の拡充のための基金などに代表されるように、主にLinux/OSSに関する技術文書の拡充を図るという。

 一方、企業における採用の促進について、OSDLのチェアマンであるリチャード・ワート氏は、「すでにLinuxを使う、使わないの議論ではなく、どう活用・適用するかを考える時期にきている」と指摘、続けて「ベンダーとディストリビューター、そして開発者コミュニティーが集う“場”を作り出すことで、ニーズに対してコードで対応していきたい」と述べ、OSDLがそうした橋渡しに取り組んでいきたいとした。

ワート氏 Intelのシニアフェローでもあるワート氏

 OSDL Japanが取り組んできたSI Forumや、著名なメンテナなどを招いてしたエンジニア向けのシンポジウム「OSDL Japan Linux Symposium」などもこうした見地に立ったものといえる。なお、OSDL Japan Linux Symposiumは11月9日に第3回が開催予定で、今年のOttawa Linux Symposiumで閉幕時の基調講演を行ったグレッグ・クローハートマン氏などが登壇予定となっている。

 質疑応答では、Red HatのLinuxディストロに対してエンタープライズ級のサポートを提供するという発表を行ったOracleについての見解を求められた。コーエン氏は、「Oracleは2002年からLinuxでも堅牢なシステムが構築できるよう支援する『Unbreakable Linux』サポートプログラムをスタートさせており、自分たちでレベル1、2、3の提供を行うと考えるに至ったのはごく自然な流れではないかと思う」と述べた。

 同様に、MicrosoftとNovellの提携についても、「前向きなサインではないかと思っている。MicrosoftのビジネスにおいてもLinuxが中に入り込んでいることを顕著に示すもので、(バルマー氏が)Linuxの重要性を認めたことをうれしく思う」とコーエン氏。今後も注視していきたいとした。

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