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» 2006年11月09日 08時00分 公開

電話と無線LANの相性は本当にいいのか?無線LAN“再構築”プラン(3/3 ページ)

[寺下義文,ITmedia]
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高速でつながるとはかぎらない

 これまでの説明だけでも、VoWLANの難しさは十分に伝わったと思うが、それだけではない。WLANはベストエフォート型の通信であるということも、さらにVoWLANのシステム設計の困難さを増大させるのだ。

 ここではIEEE 802.11bを例にしよう。IEEE 802.11bでは1、2、5.5そして11Mbpsの4段階の転送レートが提供されている。これは、最も電波状況が良好な時には11Mbpsでつながるが、電波状況に応じて1Mbpsまでフォールバックし、とにかくつなぐことに徹するということである。1対1の通信であれば、とにかくつなぐことに徹するというのは決して悪いことではない。何も通信できないよりははるかにマシだからだ。しかし、先述した半二重の環境下では、それが裏目に出ることもある。

 インフラを設計する場合、そこにどれだけのトラフィックが必要かを勘案した上で設計する。そしてVoIPであれば、1台のAPの配下で、どれだけの同時通話を可能としたいかで設計することはいうまでもない。

 以前、筆者は月刊誌の無線LAN特集記事の中で、11Mbpsの場合でも同時8通話程度が実測値となると書いたことがある。その後、メーカー各社もAPをデータ系寄りのチューニングから、VoIPを意識したチューニングに変えるようになってきている。最近計測したシスコシステムズの無線LANシステム「Cisco Aironet 1300シリーズ」では15、16通話まで可能になっており、以前解説した理論値通りの値が出せることが分かった。

 しかしこれは、その十数台すべてが11Mbpsでつながっていることが前提である。1台でも1Mbpsでつながって通話する端末があると、同時通話数は2、3台に落ち込んでしまうのだ。

 これは、11Mビットのデータを11Mbpsで流す場合と、1Mビットのデータを1Mbpsで流す場合とでは、どちらも同じ1秒間帯域を占有するからである。つまり、流さなければならないデータ量が同じなら、11Mbpsでつながることに対し、1Mbpsでつながってしまうことはその11倍帯域を無駄に消費することになるのだ。これはIEEE 802.11gであっても同じである。1Mbpsでつながるものを認めると、54倍ものロスを生じさせる可能性があるということである。

 たった1台が、とにかくつなぐということを行ったがために、その他すべての足を引っ張る結果を招いてしまうことがお分かりいただけただろうか。ここまでの説明から、今一度「WLANとVoIPの相性はどうか?」と問いかけた時、賢明な方なら「決して相性が良いものではなく、WLANはVoIPを展開するにはむしろ不向きなインフラである」と答えてくれるだろう。

寺下義文

日立コミュニケーションテクノロジー IPネットワークセンタ開発部 SIP:OFFICEグループ技師。1986年、日立インフォメーションテクノロジーに入社。以来9年間データベース関連製品のプログラマーを経験し、1995年からネットワークSEとして多数の大規模ネットワークの構築も経験。さらに2003年から自社VoIP製品である「SIP:OFFICE」の開発に従事。2006年10月より事業統合により同社に転属。難解な技術を平易な言葉で表現することには定評がある。燃料は酒。これがないと走らない。


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