IT部門にとって朗報? 日本版SOX法の実施基準案

アビームコンサルティングは、11月7日に金融庁が公表した日本版SOX法の実施基準案について、プレス向けに解説を行った。「(IT部門にとっても)この基準案は朗報なんてものじゃない」とEBS事業部プリンシパルの永井孝一郎氏。

» 2006年11月14日 08時00分 公開
[堀哲也,ITmedia]

 11月7日に金融庁がWebサイトで公表した日本版SOX法の実施基準案について、アビームコンサルティングは11月13日、プレス向けに解説を行った。

 「(IT部門にとっても)この基準案は朗報なんてものじゃない。むしろ悲報じゃないか」――同社EBS事業部プリンシパルの永井孝一郎氏は実施基準案に対し、こう指摘した。

永井孝一郎氏 アビームコンサルティング EBS事業部プリンシパルの永井孝一郎氏

 永井氏が指摘したのは、3部構成で作成された実施基準案の第3部「財務報告に係る内部統制の監査(案)」。ここでは監査人が監査すべきとされる内容が示されている。監査内容が具体的になったことで、IT部門も対応がしやすくなった一面もありそうだが、「余りに具体的すぎて、1つ1つ確実に対処していかなければならないとなると、これは大変なことになる」と、実現性に疑問符を付けた。

 これは監査を行う監査人にとっても同様という。「これを見て頭がくらくらした。監査法人でシステム監査を行える人間は少なにもかかわらず、大企業が何百億円とかけて構築してきたシステムのドキュメントをすべて見るというのは不可能」と指摘。「第3部はシステムのことをよく理解している人が書いているのが分かる。しかし、システム監査のことが分かっているとは思えない」と手厳しい。

 永井氏は、今後、日本公認会計士協会から出される実務の基準で落としどころが示されるはず、と話す。「彼らが自分の首を絞めるようなことをするとは思えない」ためだ。

 実施基準案では、そのほか、対象に関連会社(持分法適用会社)の評価やグループ全体の決算調整等プロセスの評価という範囲拡張が行われていたり、想定されていた勘定科目アプローチが、虚偽記載の発生しやすい決算調整プロセスや事業目的にかかわる業務プロセスに焦点を当てるなどの特徴があるというが、さまざまな矛盾が残されているという。

 「読めば読むほど解釈が難しい。各所の要請でいかにも早めに出したというのが見え見え。この中身で出したら、パブリックコメントが大量に出てくる。このままパブリックコメントに任せるのであれば、来年1月の基準確定は難しい」と永井氏。基準案は11月20日に承認を受けた後、パブリックコメントに移る見通し。

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