総務:「分かりました。急いで周知します」
本来なら、この総務担当者からわたしが指示を受ける立場なのだが、あまりの気迫に彼も素直に指示を受け入れてくれた。
そこからは、異なるフロアにあるサーバ室にこもり、立て続けに4台のプリンタの設定を行った。途中再起動も入ったが、各ユーザーへの周知が上手く機能したのか、わたしの内線用のPHSに問い合わせが入ることはなかった。なんとかサーバ側の設定を終えると、次はクライアント対応だ。
さて、最も早くプリントできるようにするにはどの方法が最適だろうか。ほとんどのユーザーがプリンタの設定を自分でやった経験がないのだ。メールでやり方を説明するには、文書作成にしばらく時間を要してしまう。そのころには、既にプリンタを使いたいというクレームめいた要望も上がってきていた。
フロアを見渡すと、この4台のプリンタを使用するユーザーは全部で60名程度。やれないことはない。よし、ここは1台ずつローラー作戦でわたしがプリンタを設定して回ろうじゃないか!
できる限りのスピードで、各ユーザーの机を回り、古いプリンタ設定を削除、プリントサーバへ接続して各部署に割り当てられたプリンタを優先プリンタに変更していった。
10人目を超えたあたりから作業も波に乗り始め、1時間半もかからずに60名すべての設定を完了。プリンタの入れ替えを事前に把握していれば、もっと満足のいく方法でスムーズに移行できたはず。そんな悔しい思いもあったが、必死に各クライアントの設定をこなしていくわたしの姿が、殊のほか年配のマネジャー層に受けていたらしい。人間、どこで評価が高まるか分からないものである。
プリンタの入れ替え作業が終わってから、いつも用意周到な総務担当者がなぜプリンタに関して無防備だったかいろいろ理由を考えてみた。一般家庭に急速にPCが普及したことで、自宅にもプリンタがあるのが当たり前の時代となった。プリンタに対するイメージも、家にもある身近な道具と変化している。また、電源を入れればすぐに使用可能となるコピー機と一体化したプリント複合機の普及も大きく影響しているかもしれない。
ともかく、この一件で、総務にもプリンタの入れ替えには事前準備が必要との認識が生まれ、今後はこんな追い詰められた状況にもならないだろう。そう安心してしばらく経ったころだった。わたしのもとに一本の問い合わせ電話が入った。
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