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» 2006年11月22日 11時30分 公開

これからの課題は「情報の過剰状態との戦い」――sendmail開発者

sendmailの開発者で米SendmailのCSOを務めるエリック・オールマン氏が、インターネットと電子メールのこれまでの歩みとこれからについて語った。

[高橋睦美,ITmedia]

 最も広く利用されているMTA(Mail Transfer Agent:メール配送エージェント)、「sendmail」が世に出てから25年。その開発者で、米SendmailのCSO(Chief Science Officer)を務めるエリック・オールマン氏が来日し、インターネットと電子メールのこれまで、これからについて語った。

 オールマン氏がSendmailを開発したのは、カリフォルニア大学バークレー校に在籍していた1981年のことだ。ちょうどこの時期、バークレー版UNIX(BSD)の開発を進めていたビル・ジョイ氏に声をかけられたことがきっかけで、SMTPをsendmailに実装したという。SMTPについて規定した標準、RFC821/822が規定されたのが翌1982年のことだが、極端に言えば朝作ったRFCに夜には手を入れるといった「とてもダイナミックな、変化の激しい時代だった」(オールマン氏)

「電話やちょっと歩いて直接伝えればいいことまで、電子メールでやり取りしている。われわれは電子メールを使いすぎかもしれない」と述べたエリック・オールマン氏

 その後、インターネットのあり方は大きく変わった。1つは、研究者のアカデミックなコミュニティとして形成されてきたインターネットの商用化だ。その象徴が、1991年7月に登場した商用の相互接続ポイント(IX)、CIXだったと同氏は言う。

 オールマン氏がもう1つ、インターネットの大きな変化を示す動きとして挙げたのは、1994年4月に2人の弁護士によって、グリーンカード抽選手続きを代行するという内容のスパムがばらまかれた「Green Card Spam」事件だ。それ以前から電子メールを使って広告をばらまく手段は存在していたが、このケースでは、関係ない人にまで片っ端からスパムが送信され、インターネットのあり方に大きなインパクトを与えたという。

 「それ以前まで、インターネットは友好的に使われてきた。それゆえセキュリティは重視されておらず、リソースは共有する方向でアーキテクチャが構築されてきた」(オールマン氏)。しかしこのスパムをきっかけに、映画「ウォール街」でも使われた「Greed is good(どん欲なのはいいことだ)」という言葉がインターネットでも現実のものになったと述べた。

 インターネットはその後も拡大を続けてきた。それとともに、Mellisaワームのようなネガティブな問題が浮上する一方で、S/MIMEによる暗号化技術や無償のメールサービスのような新しい取り組みなどが登場してきた。オールマン氏も2000年3月にメールフィルタの「Milter」をリリースしている。「Milterは元々はアンチスパム技術として使われたが、より柔軟に使えるよう設計しておいた。そのため多くの成功を収めている」(同氏)

 ウイルスやスパムの問題はその後も収まることなく続いている。「電子メールが抱える問題の1つが、送信者の偽造が可能なこと。送信者を偽ったスパムやウイルスなども手元に届いてしまう」(オールマン氏)。これに対し今、Sender ID/SPFやDomainKeys(DKIM)といった送信者ドメイン認証によって解決を図っているとした。

膨大な情報の中から重要な情報を見つけ出す仕組みを

 オールマン氏はまた、自ら「SMTPは死んだ」とも発言した。「今はもう、われわれはSMTPは使っていない。代わりにExtend/EnhancedされたESMTPを利用している。これは大きな変化だ」(同氏)。また業界全体の変化として、DKIMなどの送信者認証に関して競合するベンダーがそれぞれ金儲けに走るのではなく、互いに協力し合って問題の解決を図ろうとしていることも大きいとした。

 スパムやウイルス、フィッシングなど、電子メールを取り巻く脅威は多い。オールマン氏は、「今後もスパムが消え去ることはないだろう。まったくなくなってしまったら、ちょっとがっかりするかもしれない」と言う。

 同氏は、こうした問題への対処法として「今はメッセージのコンテンツを見て危険かそうでないかを判断しているが、それだけでは不十分」と指摘。コンテンツスキャンも重要だが、送信元は信頼できる人かどうか、その人の身元や素性(ID)に基づくフィルタリングを併用することで「100%ではないが改善することはできる」と述べた。

 また今後の課題として、電子メールで届く膨大な情報の中から本当に必要なものを見つけ出す、インテンション管理の仕組みやツールが重要だとも述べた。

 「どのように大量のメールを管理し、自分にとって重要なものを見つけ出すかが課題だ」(オールマン氏)。もしも25年前の自分が今の環境にあったならば、メール配送の仕組みそのものよりも「どのように情報の過剰状態、情報の負荷と闘っていくかという部分に力を注ぐと思う。これは、長年かけて取り組んでいかなければならない分野だ」(同氏)

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