InterBaseから派生したオープンソースのデータベース「Firebird」。その最新版となるバージョン2.0が先日Firebird Worldwide Conferenceでお披露目された。Firebirdを求めて世界中を精力的に飛び回る木村明治氏が今回もリポートを送ってくれた。
今年で4回目を迎えるFirebird Worldwide Conferenceは、世界中からオープンソースデータベース「Firebird」の開発者、ユーザー、ユーティリティツールベンダーが集結するFirebird関連の最大級のイベントである。前回と同様にチェコ共和国のプラハで先日開催された。会場は2003年にオープンしたばかりのAndel's Hotelだ。
Firebirdをご存じない方や、「ああ、ブラウザでしょ」という方のために、ここでは、「Firebirdは、Bolandが販売しているInterBaseから派生したオープンソースのデータベース」と記すにとどめておく。詳細については、先日わたしが参加したFirebird Developers Dayリポートをご覧になるとよいだろう。
初日は1コマ60分、4コマ2トラック、計8つのセッションが行われた後、少し時間をおいてOpening and WelcomeセッションがRuby Hallで行われた。
同セッションでは、Firebirdの開発母体となっているFirebird Foundationのポール・ビーチ氏から「この12カ月間に起こったこと」として、Firebird 2.0までの軌跡がプレゼンされた。最後にFirebird 2.0のリリースが宣言され、会場は拍手に包まれた。
Firebird 2.0になっても、既存のFirebirdの良さは失われていない。つまり、手軽にインストールできて、一昔前のマシンでも楽々動く軽いフットプリント。シングルファイル構成で、クロスプラットフォームで動作するクセのないデータベースという点である。
今回のバージョン2.0では実運用で不便だった部分が改修されている。例えばインデックス長制限の緩和、導出テーブルの対応、無名プロシジャの実行、インクリメンタルバックアップ、セキュリティの強化などである。Firebirdには、Oracleモードで動作する商用アプリケーションFyracleや、一時期ロシアで開発されていたYaffilなどのクローンが存在するが、今回改修された大きな項目の幾つかは、これらFirebirdクローンで動作実績があるものを還元したものである。 Firebirdプロジェクトの特徴である、丁寧かつ執拗な(?)QAにより時間はかかったが、最新版でありながら安定した状態でのリリースを果たすことができた。
印象的だったのは、Borlandが今回のFirebird Worldwide Conferenceのスポンサーになったところだ。図にあるように、FirebirdはもともとInterBaseから2000年ごろに派生したもので、いわば「袂を分かった」関係であったが、Borlandの分離(開発ツールはDevCoに)により、両者は距離を縮めつつある。もっとも、データベースエンジン自体が統合される可能性はきわめて低く、Firebirdを使っているBorland製品ユーザーとの距離を縮めたい、との思惑のようだ。
Firebirdは、今後バージョン2.1をテスト公開して、次のリリースに備える。スローガンは「頻繁にリリース!」(Release often!)だ。2.0から3.0に向かう過程でVulcan Projectの成果がマージされることになっている。Vulcan Projectは初代InterBaseアーキテクトであり、現在はMySQLに移籍して新しいデータベースエンジン「Falcon」を作っているジム・スタークレイ氏が手掛けていたプロジェクトで、SQLをネイティブにサポートする機能などの新たなフィーチャーが3.0で実装される予定だ。
今年末から来年にかけて、Firebirdはさらに加速していく。君もFirebirdを使ってみないか?
キムラデービー代表。メーカーや独立系ソフトウエアハウスでDB本体やDB関連の開発を行い、各種パッケージソフトのPMを担当。現在は「DBを使った開発の心理的・物理的負担を下げる」を合い言葉に自営で活動中。Firebird日本ユーザー会の2006年度理事長でもある。
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