失敗はオフショアベンダーのせいだけ? アクセンチュアが日米活用能力を比較

米国に比べ、日本はIT投資額に占めるオフショア開発の比率は低い傾向にある。それは、活用方法にも問題があるのではないか? アクセンチュアがJEITAの委託を受け、日米のオフショア開発の活用能力度を比較調査した。

» 2006年12月08日 08時00分 公開
[堀哲也,ITmedia]

 アクセンチュアは12月7日、社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)の委託を受けて行った「海外・国内企業におけるソフトウェアのオフショア開発についての調査」の結果を発表した。米国企業と比較して、業務の基準定義や進行プロセスが確立されていないため、オフショア活用能力は、すべてにわたって低いという結果が出た。

 「活用方法に問題があるのではないか?」――日本は米国に比べ、IT投資額に占めるオフショア開発の比率は低い傾向にある。理由として「品質管理が難しい」「言語の違いによるコミュニケーションの問題」などが課題として挙げられるが、「開発を発注する企業側にも問題があるのではないか」というのが調査のきっかけだ。

 それによると、日米企業のオフショア開発能力レベルの平均は、「オフショア活用方針・基準」「計画・契約」「実行管理」「評価」すべての過程で、日本企業の能力レベルは米国企業を下回ることが分かった。

オフショア開発の全ステージで活用能力は劣る

 オフショア活用方針・基準では、特に「オフショア先選定能力」が大きく下回った。米国では、選定基準として7〜8項目を持っている企業が半数以上を占めたが、日本は基準なしが大半。アクセンチュア通信・ハイテク本部エグゼクティブパートナーの田中陽一氏は「組織としての基準なしに開発案件ごとの都度判断を続けても活用レベルは向上しない」と話す。

 田中陽一氏 アクセンチュア通信・ハイテク本部エグゼクティブパートナーの田中陽一氏

 計画・契約については、要件定義、仕様変更ルール、役割分担で日米の隔たりが見られた。「分散環境で仕事するには、組織的な仕組みが必要だ。米国ではオフショアベンダーをパートナーと考え、早い段階からブリッジSEが参加している。しかし、日本企業は“下流の下請け”ととらえている傾向が見られる」という。

 また、実行管理のステージでは、課題管理・リスク管理に大きな差があった。田中氏は、この点で品質管理における第三者の外部監査に注目。「実際に、外部監査を導入している企業としていない企業を比較してみると、全フェーズにわたり、外部監査を導入している企業の方が活用レベルは高いという結果も明らかになった。外部監査を導入がオフショア活用レベル向上のキードライバーになる」と分析する。

 案件修了後の評価となる効果測定や予実乖離(かいり)分析においても、日本企業は、評価実施度合いが低かった。「基準プロセスを組織的に高度化させていく仕組みが日本企業にはない。これも米国に比べ、オフショア開発能力レベルが低い原因の1つ」と分析する。

システムインテグレーターの活用が得策

 田中氏は「オフショア開発が失敗する理由の半分は自社にある。要求仕様をきちんとかけないのにオフショアベンダーを探すのはまだまだ早い」と一刀両断する。また、日本はなれ合いの構図が多く、基準やプロセスの整備、定着・改善のための移管した体制整備が遅れてもいる。「オフショアのどのベンダーがいいという前に、まずは自分のことを考える必要がある」(田中氏)ようだ。

 このような問題に対し、田中氏はシステムインテグレーターを上手く活用することが得策とアドバイスする。ただ、丸投げではなく、自社のオフショア開発能力を高度化することも重要とも加えた。

 同調査は、2006年8月〜9月中旬にかけて、オフショア開発を活用しているハイテク機器・ソフトウェア業界を主に対象にした。日本26件、米国9件の計35件のオフショア開発案件に対して行った。

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