「このままニートになってしまうのか?」故郷の札幌に戻ったものの、就職口を見つけられずにいた女性と、「ITアーキテクト」育成ミッションに訳も分からず参加した男性が、札幌の地域振興プロジェクトを通じてどのように自身をキャリアアップできたのか?
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「自分はこのままでいいのだろうか」――自分の仕事に対して、こんな疑問を抱いたことはないだろうか?
バリバリ忙しく仕事をこなしている人・・・自分に向いた仕事とは何か見つけ出すことができない人・・・仕事の中味や取り巻く環境は違っても、「このままでよいのか?」という不安は、誰もが抱いているはずである。
北海道札幌市が実施するITサービス産業を活用した地域振興のためのプロジェクトによって、仕事に対する疑問に一つの答えを得た人たちがいる。一つの経験がそれぞれのプロジェクトに参加したメンバーに新しいチャンスを与えることになったのだ。
まったくITスキルがなかった馬場友香さん、ITベンダーで日々忙しく仕事をする磯野晃さん、自分の仕事を見つめ直すきっかけとなったそれぞれの経験をご紹介しよう。
「自分はこのままニートになってしまうのだろうか?」
故郷である札幌に戻ったものの、就職口を見つけることができなかった馬場友香さんはそう考え始めていた。
大学を卒業し、岐阜県の販売業務を行う会社に就職したものの、故郷である札幌に戻りたいと1年で退社。ところが、札幌に戻っても、新しい就職先を見つけることができずにいた。
半年に及ぶ就職活動を行っても就職できない。そんな日々が馬場さんに大きなストレスを与えていた。「悩み始めると結構、悩む方なので、このままニートになってしまうのかなとも思ってしまっていました」
そんな馬場さんに新しいチャンスを与えたのは、駅に貼られていた一枚のポスターであった。
「ITエキスパート研修生募集!」
そう書かれたポスターは、札幌市が地元の産業育成を狙いとして行っているプロジェクト「地域提案型雇用創造促進事業」のものだった。このプロジェクトは、札幌市に民間企業数社が協力し、実施しているもので、パソコンはメールの送受信ができる程度といったレベルの人にITの専門教育を提供。企業で即戦力として働く人材を育成することを目指している。
もちろん、ITスキルがほとんどなかった馬場さんにとって、技術を身につけていくことは決して容易なことではなかった。
「一日、何時間も勉強してすべてをその場で理解できるわけではありません。学校で教えてもらったことを家に戻って復習して、ようやくスキルを身につけることができました」
自分一人ではなく、このプロジェクトに参加するメンバーが複数いたことで、「途中であきらめず、勉強を進めていく力になりました」と話す。
最後まであきらめることなく、研修を続けた馬場さんは見事札幌市内のITベンダーに就職。プログラマーとして忙しく働く日々を送っている。
「最初は何のためのプロジェクトなのかさえ分からず参加しました。それがこんなに手応えを感じられることになるなんて、最初は想像もできませんでした」
磯野晃さんは北海道NSソリューションズのグループマネジャー。最初に紹介した馬場さんとは違い、ITスキルを生かして数々のシステム開発事業に加わり、社内では中堅スタッフとして活躍している。
そんな磯野さんが参加したのは、札幌市が実施した「高度情報通信人材育成事業」。札幌市にあるITベンダーは、大手ITベンダーの下請け、孫請けとしてシステム開発にかかわることが多く、オフショア開発との競争にさらされて、収益が年々圧迫される構造の原因の一つとなっている。
そこでその状況を変えるため、札幌市が高度なIT知識を持った人材「ITアーキテクト」を育成するという目的のもとに、それを実現する人材として磯野さんをはじめ、札幌市内にあるITベンダーの精鋭17人が集められた。
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