無線LANを基幹ネットワークへと進化させる3つの要素「行く年来る年2006」ITmediaエンタープライズ版(2/3 ページ)

» 2006年12月25日 09時00分 公開
[堀見誠司,ITmedia]

WiMAXに大手企業の参入相次ぐ

 一方、無線LANの範ちゅうからは離れるが、広域無線ブロードバンド技術「WiMAX(World Interoperability for Microwave Access)」にかかわる業界の動きも目を引いた。特に移動体通信を想定するモバイルWiMAX(IEEE 802.16e-2005)に大手企業が注目し、商用化に向けた各種の取り組みを本格的に開始している。早期からWiMAXを研究していたKDDIを始め、ソフトバンク、イー・アクセスアッカ・ネットワークス、NTTドコモなどの名だたるキャリアが屋外実証実験用の無線局免許を取得、無線LANとのハンドオーバー実験などを実施した。

 このWiMAXでの関心事は、事業者の使用周波数帯割り当てと、具体的なサービス内容だろう。総務省の作業班による具体案では、モバイルWiMAXが利用する2.5GHz帯の95MHz幅のうち、衛星システムとの干渉や利用制限のためのガードバンド(ほかの無線システムとの干渉を防ぐ周波数)を除いた80MHzの中で、さらに異なる無線方式が混在するときの相互干渉を避けるためのガードバンド幅(5MHzないしは1MHz)を設定することになる。2007年明けには、割り当て事業者数や割り当て条件を示した免許方針が出され、夏ごろにはサービスを行う事業者の選定が行われる見込みだ。

画像 モバイルWiMAXにおける周波数帯割り当て。選定される事業者数はガードバンド幅によって決まる

 このうち、10MHzが割り当てられるとすると事業者は7社となるが、実際には3、4社程度にまで絞られるとみられる。「10MHzの場合は最大スループットが下り20Mbps、上り8Mbps程度だが、平均の実効速度はモバイルでも最終的に下り約25、26Mbps程度にまではなるはずだ」(KDDIの要海敏和ワイヤレスブロードバンド開発室長)。

 実証実験の段階から各事業者のアピールは始まっており、それぞれが示す事業計画の内容や実現可能な品質次第だが、現時点ではWiMAXを生かした具体的なサービス像はまだ霧中にある。VODによるモバイルトリプルプレイやシンクライアントなど、多様なサービスの可能性が考えられるが、KDDIの小野寺社長兼会長は「携帯電話サービスを置き換えるのではなく、新しい市場を開拓するものになる」と述べている(関連記事)。PCを利用したデータ通信など、ケータイよりも情報量が多い通信に向くという位置付けだ。KDDIの場合でいえば、同社の提唱する「ウルトラ3G」のアクセス網の1つを担う(関連記事)。

 米Yankee Groupの予測によると、2011年にはアジア太平洋地域におけるモバイルWiMAXユーザー数は約810万人になるという。実際のサービスインは、早くても2008年下期になるが、いずれにせよ、WiMAXは通信メディアの1つとして、ケータイサービスや固定系通信と連携してサービスのすそ野を広げる役割を果たすことになるのだろう。

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