無線LANを基幹ネットワークへと進化させる3つの要素「行く年来る年2006」ITmediaエンタープライズ版(1/3 ページ)

企業インフラに定着した感のある無線LAN(WLAN)も、有線LAN上と同等のアプリケーションを動かすにはまだ信頼性が足りない。市場の動きを振り返ると、IP電話に代表される音声通信や「IEEE 802.11n」「WiMAX」などのブロードバンド技術が、WLANを「基幹網」へと進化させていく構図が浮かぶ。

» 2006年12月25日 09時00分 公開
[堀見誠司,ITmedia]

 無線LAN(WLAN)は、有線LANに次ぐ「第2のLAN」として、もはや企業ネットワークに定着したといえる。現在、有線イーサネットのインフラ上にさまざまなアプリケーションが乗り、PCのソフトフォンやテレビ会議システムなど、リアルタイム性の高い通信も日常的に行われている。有線のインフラにWLANが混在してくると、業務データだけではなくビデオや音声といったアプリケーションも当然そこに乗せようという動きになり、特に内線電話をIP化するVoIP(Voice over IP)はWLANの市場性を高める大きな要因となった。

広がり見せた無線VoIP

 2007年までにVoWLANを導入する企業数は2005年の導入企業の3倍になるとの予測(米Infonetics Research調査)があったが、2006年は、VoWLAN(無線VoIP)、つまりストレスのない音声通信をWLAN上で行うためのノウハウや技術をキャリアやSIerが着実に吸収した年になる。実効速度や信頼性の点で決して音声との相性がいいとは言えないWLANを、インテグレーターがアクセスポイント(AP)の設計についてVoIP寄りにチューニングし始めたのだ。

 その結果、NTTドコモの「PASSAGE DUPLE」に続き、KDDI(au)が企業向け無線LAN対応ケータイ「E02SA」を利用した「OFFICE FREEDOM」を7月から提供、日立電線やNECも中堅・中小企業向けのモバイルセントレックス構築パッケージを発売するなど(関連記事1関連記事2)、国内企業のVoWLAN導入のすそ野を広げつつある。

 端末のハンドオーバー時のAP管理を効率化する無線スイッチベンダー側も、「音声がWLANをドライブする」とするメルー・ネットワークスやアルバワイヤレスネットワークスなどが、端末の接続数や電波干渉、QoS(サービス品質)、冗長性など音声通信を支える上で課題の残る現在のIEEE 802.11標準を独自に「補完」するソリューションを提案する。

 それでもVoWLANの設計は難しく、事前のサイトサーベイを含めた地道なノウハウの積み重ねが必要であることに変わりはない。VoWLANのインテグレーション手掛けるユニアデックス ワイヤレスIPC事業部 WIPCサービス企画部の豊田直子主任は、「実機を用いてのテストや運用開始後の定期的なチェックが欠かせない」と指摘している。

 また、調査会社によると、WLANのセキュリティ対策もいまだ不十分だとの指摘があり、実際のところ、何も暗号化を施していない企業もある。無線の通信は、その気になればどこからでも傍受できてしまう危険性をはらんでいる。AES、TKIPによる暗号化やIEEE 802.11X認証はエンタープライズWLANの基本要件になると考えていいだろう。

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