芽吹くコンシューマーPLC、もうすでに一歩先を模索「エンタープライズPLC」のススメ(2/3 ページ)

» 2007年02月20日 08時00分 公開
[井上猛雄,ITmedia]

松下電器「PLCがネットワークの二またソケットになる」

 同社ではPLCの需要について、少なくとも2010年までにはアダプタよりも組み込み用の需要の方が大きくなるとみている。PLC機能をコンパクトにまとめて組み込めるモジュール製品も提供する方向だ。

 「このモジュールを製品に組み込めば、さまざまな分野に応用が利くようになる。例えば、電話機に導入すればPLC内蔵VoIP(Voice over IP)端末になり、ネットワーカメラに組み込めば配線の自由度が格段に上がる。われわれのグループ事業部や他社でこれを使ってもらい、相互にHD-PLC方式で通信できるような展開を考えている」(祖父江氏)

 また、PLCの機能をあらかじめコンセントに組み込んで、宅内に最初から据え付けるようにすれば、ユーザーが意識しないうちに自然に家庭内へPLCが浸透していくことになるかもしれない。普通のイーサネットコネクタが家に「インビジブルな形」で存在する状態だ。

 創業当時、松下電器で一番最初に売れた製品は「二またソケット」だった。それがヒットして、現在の礎を築いたという経緯がある。祖父江氏は「二またソケットは電気の供給口を増やすことで豊かな電化生活の先駆けとなった。家庭内にたくさんのネットワークへの入り口を用意するPLCは、ユビキタス社会の構築に貢献できる」という。同社ではPLCのテクノロジーを“第2の創業技術”としてとらえているようだ。

WLAN、PLC、同軸を使い分けるKDDI

 次に通信事業者の動きをみていこう。PLCに対する取り組みが最も早かったのがKDDIだ。同社では、2006年12月に「ひかりoneホーム」のユーザーに対して宅内で高速PLCを利用できるように、PLCモデムのキャンペーン販売を開始した。アイ・オー・データのPLC機器「PLC-ET/M-S」(スターターパック)を特別価格(1万3800円、先着500名限定)で提供するというものである。

 同社のサービスについて、ブロードバンド・コンシューマー商品企画本部 機器開発部 端末1グループリーダーの大森英晴課長は次のように語る。

 「隣家との干渉問題などがあるといけないので、マンションのような集合住宅には提供しない。あくまで一戸建てが対象。すでにわれわれの光サービスを利用しているユーザー向けだ。サービスで割り当てられた固定IPアドレスからしか機器設定できないようになっている」

画像 KDDIブロードバンド・コンシューマー商品企画本部の大森氏(左)と池田氏

 PLCサービスに関して、同社はサポート体制も整えて万全を期しているが、現在のところ問い合わせは少なく、特に目立った動きもない状況だ。「まだPLCが出始めて間もないこともあり、ネットワークの知識があるヘビーユーザーが多いからではないかと推測している。とはいえ、これからが本番だ」と、同社ブロードバンド・コンシューマー商品企画本部 商品サービス開発部 開発1グループの池田大樹課長は強調する。

 「ユーザー層が広がれば、PLCの性能面について問い合わせが増えてくるかもしれない。電源回りの環境によって、パフォーマンスが千差万別になるからだ。ただし、これは電波状況によって性能が変わる無線LANでも同じこと。無線LANと同様の形態で利用されるだろう」(大森氏)

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