卒業生に贈る言葉――フラットワールドではコラボレーションが成功の鍵1分ショートレビュー

ソフトウェアの生産では、インドや中国を舞台に分散型開発への流れが加速している。複雑、競争、コラボレーション、分散、そしてフラット。ここ2、3年で起きている大きな変化を見逃してはいけない。

» 2007年03月06日 12時49分 公開
[克元 亮,ITmedia]

ここで紹介する記事は、developerWorksの「フラットワールドのスキルとツール」です。


 本稿の著者は、WPI(Worcester Polytechnic Institute)でコンピュータサイエンスを教えているGary Pollice大学教授。これからITの専門家としてキャリアをスタートする学生たちに、競争の激しい現場をどのように見るべきかを示唆してくれている。

 ソフトウェアの開発では、技術的な複雑性を乗り越える能力が問われる。しかし、最近の学生はテクノロジーの申し子。何年も前からインターネットを使いこなしている。だから、彼らにとって、技術的な複雑性は成功の障害にはならない。むしろ、注意したいのは、ソフトウェア業界における競争やコラボレーション、分散の動きだろう。

 ニッチ市場のリーダーを狙って、独創的なアイデアを守り競争相手を打ち負かすモデルは、IBMやSUN Microsystemsなどが活躍するコンピュータ市場では通用した。しかし、研究開発によって絶え間ない革新が求められるソフトウェアでは、別のモデルが必要となる。それは、他社とコラボレーションしながら競争するモデルである。

 例えば、UML(Unified Modeling Language)とUMLをサポートする開発ツールは、コラボレーションの中から生まれている。また次世代のモデリングツールとして期待されているMDA(Model-Driven Architecture)関連ツールも、コラボレーションする中で標準規格に準拠し相互運用できる必要がある。

 遠隔地からの開発が可能な分散型開発は、作業者を1カ所に集めるための経費やオフィススペースの節約、働く場所を制約しないことによる有能な人材の参加促進を理由に、盛んに取り組みまれている。しかし、残念ながら、分散型開発では、アジャイルの原則である同一場所での作業は不可能だ。だからこそ、効果的で迅速なコミュニケーションやフィードバックが必要となる。これを解決する手段として、グループウェアの活用が効果的だ。

 本稿では、オフィススイートからIBM WorkPlaceに至るまでのグループウェアの変遷を振り返る。中でも特筆すべきは、グループでの共同作業を標準でサポートするEclipseと、Jazzプロジェクトだ。Jazzプロジェクトでは、チャット、分散編集、VoIPなどをサポートし発展を続けている。今や、効率的な分散型開発を実現するための技術的な基盤はそろいつつあるのだ。

 トーマス・フリードマンの『フラット化する世界』を読んだ方なら、報道機関のニュース配信から子どもの家庭教師、ソフトウェアの開発に至るまで、多くのサービスが米国から遠く離れたインドにアウトソーシングされている現状を目にしたはずだ。日本の自動車と同様に、「ソフトウェアの生産」がインドの代名詞になる日は近いのかもしれない。

 フリードマンは、階層ではなく水平(フラット)なコラボレーションを可能にする新たな情報革命を、グローバリゼーション3.0と呼んでいる。グローバリゼーション3.0の時代に、世界中のパートナーと組むために必要なのは、高速なインターネット回線と知識、そして意欲だけだ。これから社会人になるに当たって、論理的な思考や知的好奇心はもちろん必要である。しかし、これだけは肝に銘じておいて欲しい。

 「あなたは孤独ではない。フラットワールドでの競争とコラボレーションによって、世界中のパートナーとWin-Winを実現しビジネスを成功させよう」

ここで紹介した記事は、developerWorksの「フラットワールドのスキルとツール」です。


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