あるWebプログラマーの作業環境――豪傑の三種の神器【後編】新入学生/新社会人応援企画(3/3 ページ)

» 2007年03月14日 07時00分 公開
[はてな 伊藤直也,ITmedia]
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コラム:Windows、Mac OS X、UNIXの併用

 本編にもあるとおり、わたしはWindows、Mac OS X、UNIXを併用しています。もちろんUNIXだけに絞るのもアリなのですが、そうはしていません。これには幾つかの理由があります。

さまざまな環境を利用できるようにしておく

 Webアプリケーションのデバッグにはさまざまな環境が必要になります。その理由として、1つはどんなOSとブラウザでも動くように考慮するため、もう1つはデバッグ用のツールのためです。

 昨今では、ブラウザの仕様差もだいぶ縮まってきているものの、やはりそれぞれのOSやブラウザで多少の癖があったりします。それらをいつでも試せる環境を用意しておくと、検証やデバッグが迅速に行えるため、結果としてアプリケーションのバグフィックスや機能追加を素早く行うことができます。

 また、ApacheやMySQLなどオープンソースのソフトウェア周りには、それらツールを管理するための便利なソフトウェアがたくさんあります。その中にはWindowsやMac OS Xでしか使えないもの、あるいはUNIXでしか使えないものもあります。それらを使える機会を逃さないためにも、複数のプラットフォーム(OS)を扱えるようにしておくのは良い選択だと思っています。

プレゼンテーション用にはやはりWindowsやMac OS X

 わたしは仕事の都合上、カンファレンスなどでプレゼンする機会が多くあります。すると、ノートPCが必要になります。いまどきのカンファレンスは、「ノートPCを持ち込んで自分のPCでプレゼンする」というのが普通です。そしてプレゼンテーションに使うツールは、僕の場合PowerPointかKeynoteなので、どうしても「WindowsかMac OS Xが欲しい」ということになります。なおかつ、「そのPCで開発もしたい」となると、UNIXが必要になって併用することになります。

 プレゼンテーション用ツールはUNIXにも優れたものがありますし、最近ではブラウザでプレゼンテーションをする人も増えてきました。先日訪れたカンファレンスでは、JavaScriptでプレゼンツールを自作している人も結構いました。が、わたしにはプレゼンツールをHackするモチベーションはほとんどないので(笑)、PowerPointやKeynoteに頼りきりです。

GUIとCUIの良いとこ取り

 開発以外の作業でも、いざというときにUNIXのCUIが使えると便利な場面というのは多々あります。例えば、ブラウザで閲覧しているサイトにリンクの一覧があるとします。「この一覧、何行あるのかな」なんて数えたいとき(例えば何かの名簿ですとか)。こういうときにUNIXのコマンドラインツールがすぐ使える環境があると、

$ cat | wc -l


としてからこの端末にリンクの一覧をコピー&ペーストしてCtrl+Dキーを押せば、

223


と即座に結果を返してくれます。ほかにも、簡単な足し算や引き算を行うときに、perlshという対話型のperlシェルを使うと、

$ perlsh

main[25]$ 1 + 1

2

main[26]$ log 10

2.30258509299405

main[27]$


という感じで、普段使い慣れたPerlの構文で計算できます。OSに標準搭載の計算機よりも手早く済むし高機能、便利。こんな具合に、日ごろのちょっとした作業をこなすときに、UNIXの基本的なコマンドラインツールが役に立ちます。テキストの置換しかり、検索しかり、計算しかり。

 一方で、例えばWebブラウジングを快適にするツールですとか、表計算ソフトやプレゼンテーションといったGUI周りの環境に関して言うと、近ごろのLinuxディストリビューションなどではデスクトップ環境が充実してきているとはいえ、やはり細かい使い勝手、ルック&フィール、サードパーティー製ソフトの充実面から言ってもWindowsやMac OSX に軍配が上がるでしょう。

 そこで、「GUIと、CUIの良いとこ取りをするために複数の環境を併用する」というのがわたしなりの解決策でした。

まとめ

 駆け足でしたが、2回にわたってわたしの開発環境の一端を紹介してきました。

 今回紹介した幾つかのソフトウェアのうち、もう何年もそれを使っている……というのは実はEmacsだけだったりします。さまざまなソフトウェアを試して、ようやく手になじんできたかな……と思っていても、探せばより良い方法が見つかります。Webで先人のノウハウを幾らでも知ることができるこのご時世、ツールの探求に終わりはないのかもしれませんね。

 しかし、終わりのない探求ばかりを続けていては、本業であるところの創造の作業がおろそかになってしまいます。先たちの良いノウハウをどんどん盗んで、効率良く自分のものにしたいですね。本稿が皆さんにとって、何かの助けになればうれしく思います。

本記事は、オープンソースマガジン2006年5月号「オープンソースで作る新生活環境」を再構成したものです。


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