現行制度なくして携帯電話の国際競争力はない――KDDI小野寺社長

KDDIの小野寺社長は現行の販売制度とコンセンサスの確立が携帯電話産業の国際競争力を高めると述べた。

» 2007年03月14日 20時06分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 KDDIの小野寺正代表取締役社長兼会長は3月14日、定例会見を開き、現在の携帯電話販売制度の維持が携帯電話関連産業の国際競争力強化につながるとの見解を述べた。

小野寺正社長 小野寺正社長

 これは、総務省のモバイルビジネス研究会が検討を進める奨励金モデルの見直しについて述べたもの。奨励金モデルは、既存契約者の通信料を原資として販売店に奨励金を支払い、端末の販売価格を抑えるビジネスモデル。販売価格を安くできるが、通信料値下げや日本の携帯電話市場の国際化を阻む要因だと指摘されている。

 冒頭、小野寺社長は「契約純増数は鈍化したが、端末の高機能化やサービスに対する機種変更ニーズは強く、年間出荷は5000万台規模と堅調だ」とコメント。奨励金モデルは高額な高機能端末を安価に提供することで、世界最先端といわれる携帯電話サービスの急速な普及の原動力になると説明する。

携帯電話市場 現在は周辺市場も広がり携帯電話そのものビジネスモデルを変えることは影響が図りしれないという

 通信料値下げの阻害要因との指摘に対しては、「ポイント還元や利用期間に応じた端末価格の設定など、新規と既存契約者の公平性を保つ仕組みは導入済みだが、検討会の議論を踏まえユーザーに納得される仕組みを検討したい」と話し、端末の割賦販売など柔軟な販売形態を導入する考えを明らかにした。

携帯電話での国際化とは何か?

 現在の流通制度は、キャリアが携帯電話メーカーから端末を買い取り、端末の使用を特定キャリアに限定するSIMロック機として販売する。メーカーは国内市場だけでもビジネスが成り立つといわれ、国内全メーカーの世界シェアは10%程度にとどまる。

 小野寺社長は「携帯電話産業はPCのように水平分業の世界に近づく。だが、どのような分野で国際力強化を目指すのかコンセンサスがない。例えば世界標準規格のGMS圏ではない韓国のサムスンは世界3位のシェアを持つ。セットメーカーとして世界シェアを取るという明確な目標があるからだろう」と話す。

コンセンサス 小野寺氏は「目標を正しく見据えた上での政策展開を望む」という

 その上で、「日本はモジュールや部材、サービスに強く、高機能端末を迅速に市場展開できる日本ならではの制度が起因してきた。端末ビジネスが変わる中、これら分野の競争力を高める取り組みが大切だ」という。

 そして、「KDDIはベンダーの技術を先駆的にサービスに取り入れるテストベッド。当社があらゆる技術・サービスの開発を主導するのではなく、メーカーが開発に専念できるためのプラットフォーム共通化など、キャリアとしてすべき取り組みに注力する」と述べた。

 最後に小野寺社長は、仮想移動体事業者(MVNO)との連携による新サービスも含め、国際競争力の強化につながる現行の流通制度の維持とコンセンサスの確立を提起。「これらの成功が中長期的で持続的なユーザーへのサービスにつながる」と締めくくった。

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