混戦続き 中堅ERP市場の行く末「勝ち組」ERPベンダーの中堅戦略(2/2 ページ)

» 2007年03月19日 07時51分 公開
[河田裕司,ITmedia]
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 なぜこのようになっているのかというと、最初で述べた「中堅企業がERPを導入することに対し、さまざまな追い風が吹いている」ことが大きな要因だ。そのため、他の市場に比べて中堅企業を販売のターゲットとするベンダーが多くなっている。その結果、このエリアでの競争の過熱化が進んできている。

 この点は後述するが、現在、中堅企業市場で圧倒的なシェアを獲得しているベンダーもいない。トップシェアのベンダーでもシェアは20%にも満たないのが現状であり、競争の激しさを物語っている。このような現状に対し、過熱する市場を避けて「業種・モジュール別」というようなニッチな戦略を進めているベンダーもあり、各社は生き残るための戦略を必死に練り直していると言える。

寡占化もないが、下位ベンダーの逆転も難しい

 では、実際の中堅・中小企業向けERP市場のシェアを見てみよう。

中堅・中小企業向けERP市場のシェア 中堅・中小企業向けERP市場のシェア

 シェアトップは2004年度同様、富士通の「GLOVIA-C」で16.1%。次いで、大塚商会の「SMILE α AD」が13.3%で、住商情報システムの「ProActive」が8.5%と続いている。

 一見、2004年度のシェアから大きな変化はないように見える。事実、富士通、大塚商会、住商情報システムの上位3社の位置付けは変わっていない。ただし、下位ベンダーとのシェアは微妙に詰まりつつある。多くのベンダーが中堅企業をターゲットとした戦略を展開していることが、上位3社による「寡占状態」を拒んでいる要因だ。

 では、上位ベンダーはなぜシェアをキープできているのだろうか? 端的に言えば、その要因は「販売力(提案力)」だ。現在の各社のERPパッケージを機能ごとに差別化することは非常に難しい。業種やモジュールに特化したERPならばそれも可能だが、包括的に中堅企業をターゲットしたパッケージでは、製品として差が出にくいからだ。そこで、ベンダーごとの差となって現れてくるのが「販売力」である。

 もちろん「圧倒的な多数を占める販売力はありえない」ので、シェアは極端に寡占化する可能性は少ない。しかし、逆に下位ベンダーが一挙にシェア上位に躍り出ることも難しい。それはもちろん「完パケの売り切り型のERP」がないためだ。カスタマイズ=システムインテグレートは、ERPにとっては欠かせない要素だからである。

 中堅・中小企業に販売力を持っている販売チャネルは、すでに上位ベンダーのパートナーであったり、ERPの自社開発を行っていることが多い。例えば、大塚商会は自社開発の「Smileシリーズ」があり、富士通ビジネスシステムは富士通の「GLOVIA-C」の最大の販売店だ。

 次回からはベンダー別に詳細に解説したい。トップシェアの富士通のトップベンダーとしての戦略を述べる。

 この連載はノークリサーチの「06年版中堅・中小企業向けERP市場の実態と展望」の調査レポートもとに、リサーチャーが加筆、考察した。詳細は同社サイトを参照のこと。


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