リテールサポートで差をつけろ!――利益を指標にした営業管理アイティセレクト特選事例:株式会社升喜(1/2 ページ)

小売店への支援、つまりリテールサポートは卸売企業にとって営業戦略を左右する「切り札」である。その中身は細かな販売情報。特定地域の特定商品の売れ行きなどの情報は担当営業から出てくる数字やPOS情報だけでは自信を持って提示することはできない。正確で役に立つ「自社製」の情報こそ武器になる。

» 2007年03月23日 09時00分 公開
[アイティセレクト編集部]

導入前の課題

酒類卸売業の特徴として取引先により利幅が違ったり、後処理の値引きがあったりしたため、売上ベースの営業指標は必ずしも自社の発展に結びつかなかった。また情報を管理するだけでなく、具体的な営業アクションに活用したかった。


導入後の効果

取引先ごとに異なる利幅を反映させた利益ベースの管理ができるようになったため、確実な成長を目指す営業指標が立てられるようになった。約100万行の月間データを数秒で分析。いつでも、どこでもリアルタイムな具体的提案ができるようになった。


品種・銘柄の拡大に拍車

 創業130余年を誇る酒類食品総合卸売業の老舗、升喜。1875(明治8)年の創業時は日本橋蠣殻町に集う卸問屋の一つであり、親切・信用をモットーに今日に至っている。

 昭和40年代の日本の酒販業は「商品を並べれば売れる」時代だった。品種も限られており、清酒、瓶ビール、焼酎、ウイスキー程度。ところが昭和40年代後半、日本初のオールアルミ缶ビールが発売された。軽量で回収の手間がいらず、鮮やかな印刷を施せるアルミ缶はまたたく間に普及し、缶ビールの銘柄を増やした。

 また、ウイスキーや焼酎を炭酸飲料などで割る飲み方も流行し、アルコール飲料の種類はさらに増えた。ペットボトルや紙パック容器の誕生、流通の発達、自動販売機の増設、量販店やコンビニエンスストアの登場なども品種・銘柄の拡大に拍車をかけた。酒問屋の在庫管理は煩雑を極め、コンピュータ化は必至となった。

リテールサポートが会社の強さを決める

 升喜が在庫管理のIT化に着手したのは昭和40年代。それまで手書きだった仕入元帳をデータ入力したのが最初だ。そして1975年には伝票発行もデータ化して、ほとんどの在庫管理をコンピュータで行うようになった。

 そしてこの頃から古き良き時代は終わり、多様化したのは品種だけではなく、消費者の価値観、酒販店の業態も多様化してきた。そんな状況下で酒類卸を担う企業が単なる商社機能しか持っていないようでは、生き残りは難しい。升喜ではこの状況をいち早くキャッチアップし、顧客サービスの軸足を変える戦略に出る。

 升喜は企業としての基本スタンスを、小売店のリテールサポートに置いた。リテールサポート(retail support)とは、POSシステムの導入や営業情報の提供などにより、製造業者や卸売業者が取引先小売店の経営効率を向上させるべく支援すること。升喜の場合、イベント、売り場作りなどを積極的に提案し、ときには踏み込んだ経営アドバイスもする。

(株)升喜 営業本部 営業企画担当係長内山健治氏

 同社営業本部の内山健治係長は「もちろん一般店を守るためのPOPや什器の開発、提案もします」と語る。要するに升喜は取引先の業態変化に合わせて、互いに発展させていく方針を打ち出したのである。

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