リテールサポートで差をつけろ!――利益を指標にした営業管理アイティセレクト特選事例:株式会社升喜(2/2 ページ)

» 2007年03月23日 09時00分 公開
[アイティセレクト編集部]
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取引先は幅広く開拓する

 取引先の発展と自社の発展は両輪だ。現実的で正確な営業指標を立てねばならない。

 同社管理本部の梶守男氏は次のように語る。「当社も以前は売上ベースの営業指標を立てていました。しかし、酒類・食品の商社は卸先によって卸値が違います。1本単位で納品する小売店とパレット単位で納品する量販店では、パレット単位のほうが若干安くなるのです。つまり量販店との取引は、売上げは伸びても利益は薄い。売上げだけで、その店が升喜の上得意か否かを判断するのは難しいのです」

 梶部長はもう1点、酒販業界に行われる昔ながらの慣習にも触れた。後処理による値引きだ。値引き率は取引先との力関係が影響するため、一律ではない。こうなると最後の最後まで、正確な数字を読むことはできない。つまり売り上げだけを見ていては変化に対応できない、ということになる。

(株)升喜 管理本部 情報システム部部長 梶 守男氏

 升喜では数年前から、営業活動把握の指標を、売上高から純利益にシフトさせてきた。99年にハードを含めたシステムのリプレイスを行ったのをきっかけに、2001年から本格的に純利益へのシフトが始まった。

 「要は、どこに何本売れば、いくらの利益を上げられるのかを知りたいわけですが、それだけでは当社の顧客満足を高めることはできません。利益管理のツボをきちっと押さえつつ、顧客にとっても利益となるような販売手法や経営アドバイスができる。そんな夢のようなシステムはないかと、ずっと探し続けていました」(梶部長)

自信を持って営業できる強み

 升喜に選ばれたシステムは、ウイングアークテクノロジーズの多次元高速集計検索エンジン「Dr.Sum EA(ドクター・サム・イー・エー)」だった。Dr.Sum EAは年間1500万件を超える升喜の膨大なデータを数秒で分析する。どのような分析結果を表示するかは、現場を熟知する営業スタッフが検討して切り口を仕組んだ。

Dr.Sumを利用した情報分析の流れ

 「すでに20〜30パターンの切り口で分析結果を表示できるようになっており、今では経営幹部と支店長が出席する月例会議欠かせない存在となっています」(内山係長)

 Dr.Sum EAが採用されたポイントは5点。(1)高速な分析処理スピード、(2)マニュアルなしで活用できる使いやすさ、(3)自在なドリルダウン&ドリルスルー分析、(4)情報システム部門の手間がかからない、(5)集計・分析データをExcel、CSVファイルとしてエクスポートできる、といった点だ。

 内山氏は分析の実際について次のように語る。

 「特にドリルダウン分析は、顧客への具体的提案に有効です。今までは営業マンの成績分析で判断するしかなかったため自信を持って提案できませんでしたが、今は酒販店が本当に求める具体的な情報を提供できるようになりました。例えば、缶チューハイのフレーバーを特定して、どの地域のどの営業マンが何本売ったかをドリルダウン分析します。この結果から『今はこのフレーバーが売れている』『近隣地区ではこれが売れているが、この地域はまだ扱いが少ない』など、地域性や時機を加味した提案ができるようになります。また、社内の月例会議の場でも、各自が入力した月次結果をプロジェクタに映しながら進められるので、全員が同じデータを共有でき、資料作成にかかる時間と労力をほとんどなくし、ペーパーレスを実現しました」

 また梶氏は「分析できる価値に気づいた社員が積極的にデータを入力するようになってきたので、今後はマスタ整備の工夫を進め、より斬新な分析ができるように取り組んでいきたいと考えています」という。

 利用頻度が上がることで、データ整備のスピードも向上していく。利益管理という社内の取り組みは、自然な形で顧客満足度の充実にもつながっていく。

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