書類を減らしたいなら身を清めよ――人事の変わり目がチャンス企業にはびこる間違いだらけのIT経営:第26回(1/2 ページ)

書類作りばかりに時間をかけるスタッフの行動を変えるには、時間がかかる。具体的な行動としてはすべての書類を定型サイズ1ページに収める慣習を作ること。人事の変わり目にこうした提案を新しい担当役員にぶつけてみるというのも良策だ。しかし、提案を実現するには、自らの身を清めておくことが大切だ。

» 2007年03月29日 07時00分 公開
[増岡直二郎,アイティセレクト編集部]

 膨大な書類作成で悩み続ける関係者の実態とその悪弊・原因などを考えると、上層部からのプレッシャーだけでなく、担当部署やそれにまつわる現場のスタッフが、自らムダな資料を作成しているケースも多い。(参照記事)

 そして対策として、トップや取りまとめ部署の首に誰がどのようにして鈴を付けるべきか、その次の段階としてITをどう活用すべきかを考えてみよう。

 無意味で膨大な書類は企業を蝕む。これを防ぐ第一歩として「ワンページ運動」の推進をお勧めする。どんな書類もA4〜A3の一枚の中に収めるというものだ。そうしたルールを守っていない書類は受け付けてもらえない、という状況を作り出すのだ。書類削減の実務上の第一歩であるこの運動はトップダウンで行うので一番だが、いつもトップが話の分かる人とは限らない。

書類削減の提案が返す刀で…

 中堅機械メーカーE社でも、ご多聞に漏れず何かと書類が多く、関係者は常に泣かされていた。特に会議資料は膨大で、会議が終わると誰もがほとんど開けることのないファイルにしまい込み、それで関係者はひと仕事終わった気分になっていた。

 ある時、トップらが居並ぶ業績会議席上で威勢のいい設計課長が発言した。

 「わが社は書類が多過ぎるので削減し、その手間を他にかけるべきだ」

 途端にトップは一蹴する。

 「君の所はロクな資料も作れないで何を言うか。だから業績が悪いんだ。赤字を消してからものを言え!」

 実は、これには伏線があった。月例の部課長会議で、総務部から出勤率・残業・人員などの統計データが出されるが、ある時資料上にミスがあり、それを発見したその設計課長は席上で発言した。「我々が設計不良を出すとひどく叩かれるが、管理部門も同じだ。資料ミスはいわば総務部の不良だから、総務部は我々と同じように追及され、謝罪すべきだ」と。

 この発言が誰かを怒らせ、予防線が引かれたのだ。出る杭は、打たれたのである。問題の火種がどこなのかを明確にすることは、組織の中では簡単なことではない。トップを動かすことは難しいのである。

 トップが動かない時は、会議や会議資料の取りまとめ部署に働きかけ、書類削減の号令を出してもらうことである。書類削減が成功した例として、中堅のエレクトロニクス企業F社の常務取締役経理部長は親会社から派遣されたばかりであったせいもあり、部下からの「書類が多過ぎる」という直訴を受けて、会議資料をすべてA4かA3サイズの1ページとするように通達を出した。

 他の例として、個人が自発的に作る慣習が受け継がれている場合がある。これは、先輩から後輩に言わず語らず受け継がれているのだろう。この場合は、上司が力づくで担当者の頭を切り替えるしかない。筆者は、注意しても注意しても書類作成に手をかける関係者の頭を力づくで切り替えることに成功したが、半年の期間とかなりのエネルギーを要した。

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