書類を減らしたいなら身を清めよ――人事の変わり目がチャンス企業にはびこる間違いだらけのIT経営:第26回(2/2 ページ)

» 2007年03月29日 07時00分 公開
[増岡直二郎,アイティセレクト編集部]
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人事の変わり目こそチャンス

 さてこうして見てくると、膨大で無意味な書類の作成を阻止する対策として考えられることの第一は、トップに目覚めてもらい頭を切り替えてもらうことである。それが不可能なら、会議資料などの取りまとめ部署に働きかけて行動を起こしてもらうことである。

 しかし、誰が猫の首に鈴を付けるのか。書類が多くて苦しめられている者が、立ち上がるべきである。しかし、その時は己の身を清めておかなければ返り討ちに遭う。自部門の業績改善に顕著な傾向を見せ、指示された資料をほぼ完璧に作成する実績を作っておく必要がある。でなければ、E社の威勢のいい設計課長のように惨めな結末を招く。

 チャンスは1つある。人事の変わり目である。トップにしろ、取りまとめ部署の長にしろ、F社の常務取締役経理部長のように就任直後は新しい眼で対応してもらえる。さらに上のトップなどに対しては我慢に我慢を重ね、数少ないビッグチャンスを狙うしかない。

業務改革につながる「ワンページ運動」

 どうしてもトップや取りまとめ部署を動かすことができないときは、ITを利用する方法がある。IT利用は、トップなどを動かすことに成功した次のステップとしても必要である。

 IT化を好機と捉えて書類削減に取り組むのだ。

 その前に打つ手は、「ワンページ運動」である。IT利用の前に、「ワンページ運動」を展開して定着化させておくことが重要である。要するに、「BPR=業務改革」に相当する。

 IT利用は、まずデータベースを構築して、全社で情報を共有化すること。そして随時データを加工して利用すること。その次に、会議室に大型プロジェクターやパソコンを持ち込んで会議に利用することである。

 理想は、オンラインで会議用資料を画面表示するべきだが、データの正確性やタイミングなどの点からそれは極めて難しい。それまでの間、手作業で作成した資料を画面に単に表示するだけでも良い。そのとき、従来から進めている「ワンページ運動」が功を奏する。

 そして、それを社内イントラネットでアップロードして保存すると、情報の共有化になる。当面は単なる画面表示で我慢するとして、いずれオンラインに移行する準備をすべきである。筆者は、単なる画面表示からオンライン表示に段階的に移行して成功した経験を持つ。そのポイントは、データ入力のタイミングと正確性の確保である。結果として、書類は格段に削減される。

 会議や資料作成に利用できるソフトウェアも出回っているので、活用すると便利だ。

 例えばサーバにインストールしておき、プラウザの画面に引っ張り出した「書類」上に資料を作成したり、自由に書き込みをしたりできるソフトウェア、あるいは資料を登録すれば、出席者が簡単操作(例えば、タッチパネル)でリアルタイムに資料内容確認・コメント書き込み・業務指示などが可能であり、会議後の議事録を個人キャビネットへ自動格納できるソフトウェアなど、安価で入手できる。IT利用は、書類削減の絶好の機会である。

 以上の試みを断行できないなら、膨大な書類の中でいつまでも溺れ続けるしか道はない。

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