組み込み技術の無限の可能性をカタチにしていく――エンサーク阿部新社長が就任

組み込みデータベース管理製品のエンサークは、ハイテク業界で優れた経営手腕を持つことで知られる阿部哲也氏を代表取締役社長に迎えた。

» 2007年04月11日 19時08分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 組み込み向けRDBMSの開発を手掛ける米ENCIRQは4月11日、日本法人エンサークの代表取締役社長に阿部哲也氏が就任したと発表した。デジタル家電や携帯電話、車載分野への展開を強化し、「第2の成長ステージを描く」(阿部氏)としている。

阿部哲也エンサーク代表取締役社長

 阿部氏は、東京理科大学の出身で1983年に現富士通子会社のPFUに入社。PFU米国法人の最高財務責任者や社長を務めたのち、情報機器ベンチャーのRoutrek NetworksやEMS大手Celesticaの日本法人設立などに携わった。技術だけでなく財務やマーケティングにも豊富な経験を持つことから、「ハイテク業界の経営のプロとして最適な人材だった」と、ENCIRQのデッブ・コズリンCEOは阿部氏の起用を説明する。

米ENCIRQのデッブ・コズリンCEO

 ENCIRQは、2002年に米カリフォルニア州で設立され、組み込みデータベース管理プラットフォーム「DeviceSQL」の開発・提供を行っている。これまで、「京ぽん」の愛称で知られる京セラ製PHS端末「WX310K」や衛星ラジオの米XM radioの車載用受信端末などに採用された。業績は非公開ながら、売上高の実に75%以上が日本市場によるものだという。

組み込みDB分野が抱える課題とDeviceSQLの特色

 今回の阿部氏就任は、創業者や出資元の意向によるもの。2002年からエンサーク社長を務めたデビット・コーアン氏は、ENCIRQ本社の事業開発担当副社長に就任する。

1年で業績を2倍にする

 組み込み向けRDBMSは、デバイスの高性能化や処理される情報の大容量化によって、急速に注目が高まっている分野。多くのデバイスメーカーが、RDBMSのソフトウェア開発に伴うコストや時間、リスクの増大化を課題として抱えており、小型かつ低消費電力ながら高速処理を特長とする組み込み向けRDBMSの採用を広がりつつある。

 阿部氏は、「数多くのハイテク、エレクトロニクス企業の首脳から組み込みソフトウェアに関する相談をいただいており、解決に向けて自分の持てる力を最大限に発揮したい」と話す。

エンサークの日本市場での事業計画

 今後の事業展開では、まず2007年6月までにDeviceSQLの最新版となるバージョン3.1をリリースする。最新版では、DeviceSQLを持つ複数のデバイス間でデータベースを共有利用できる機能を実装するという。

 業績拡大に向けた人材の確保や米国本社との開発・サポート連携も強化する。市場開拓に向けたコンソーシアムとの啓蒙活動、新規事業開発にも取り組み、2008年の国内売上高を2006年比で2倍に引き上げる計画だ。

 国内の人員体制は、すでに米国本社に匹敵する規模となっているが、業績拡大のペースに合わせてさらに増員を行っていく。新規事業開発では、RDBMS技術を活用したマルチコアプロセッサのパフォーマンス向上などに取り組んでいるという。

 阿部氏は、「組み込みRDBMSは、組み込み技術で実現できる無限の可能性のほんの一部分でしかない。今後は誰もが考えつかなかったような新しい市場を次々と創造していく」としている。

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