電子タグの実証実験が花盛り――“動脈”だけでなく“静脈”も取り込む(1/2 ページ)

電子タグの実証実験が花盛りである。百貨店では化粧品や靴に、コンビニエンスストアではおにぎりにまで電子タグが貼付され、その華やかな取り組みが伝えられている。国内外で着実に進むRFIDの実用化への流れを探る。

» 2007年04月17日 07時00分 公開
[富永康信(ロビンソン),アイティセレクト編集部]

6業界が同時に実証実験

 2007年1月から、経済産業省が主導する「電子タグ活用による流通・物流の効率化実証実験」が大規模に展開されている。経産省は、電子タグの導入に積極的な6業界(家電、出版、コンビニ、総合スーパー、百貨店、アパレル)を対象に、工場の製造段階から電子タグを貼付し、卸、小売までのサプライチェーンを通して、物流業務の効率化と販売促進を検証する。

 官庁自ら音頭をとり、出版(小学館、講談社他)、総合スーパー(イオン、イトーヨーカ堂他)、百貨店(三越、高島屋他)といった各業界のビックネームが参加するなど、過去に例がないほどの規模だ。企業や業界に閉じない総合的な成果に向け、各方面からも期待が集まっている。

 家電業界では、「家電電子タグコンソーシアム(電子タグ利活用のための運用ガイドライン策定を目的に、2005年10月27日に設立された任意団体。ソニー、東芝、日立製作所、松下電器産業を幹事に、会員企業8社と、事務局のみずほ情報総研で構成)」が経産省より受託し、「大手家電流通懇談会」の協力を受けて実施。今回は、「保守・修理」、「店舗内の在庫ロケーション管理」の2領域に絞って実験を進めている。

 日立製作所のユビキタスプラットフォームグループで事業企画本部の担当部長を務める木村穣良氏は、「上流の製造から下流の小売までの物流部分、つまり“動脈”のみが従来は注目されていたが、今後は保守管理、リサイクルなどの“静脈”まで取り込むことが重要。量販店の協力も得て実験を進めることになった」と述べ、ライフサイクル全般での取り組みを強調する。

米国からの黒船来襲への対策

 家電業界は、2002年から経産省からの支援を受け、家電製品協会の有志メンバーによって3年ほど実験を継続してきた経緯がある。そこで明らかになったのは、業界で共通利用できるビジネスモデルがないという実態だった。時を同じくして、米国からの“黒船”も来襲し、その対応に迫られていた。黒船とは、製品梱包にタグ貼付を義務付けるが、製品単価にコストの上乗せは認めないという、米国主導の運用要求のことである。

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